甲社の状況・就業規則の場合、
Bは残業命令を拒否できるのか

「甲社の場合は、全業種において時間外労働月45時間、年360時間の36協定を締結し、先月更新した届書を所轄の労働基準監督署に提出していますし、メンバーの残業時間は全員この範囲内で収まっています。就業規則やBさんの雇用契約書にも「36協定締結の範囲内で時間外労働あり」と明記があり、今回のケースでは、短期間で新商品の企画、立案などを終わらせる条件があるため、業務上必要な残業になります。従ってA課長の命令でBさんを残業させることができます」
「B君は会社が許可したバイトを理由にして残業を断っていますが、残業を優先した場合、副業の許可を取り消したりはできますか?」
「それは就業規則の記載内容によります。副業・兼業規程を見てみましょう」

<甲社の副業・兼業規程内容(一部抜粋)>
 第○○条 従業員は、勤務時間外において、副業、兼業をすることができる。
 2 従業員が前項の業務に従事するにあたっては、事前に会社に「副業・兼業申出書」を提出し許可を受けるものとする。
 3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、禁止、許可の取り消し又は制限することができる。
(1) 労務提供上の支障がある場合
(2) 企業秘密の漏えい、もしくはその恐れがある場合
(3) 会社の名誉や信用を損なう行為や、取引先などとの信頼関係を破壊する行為がある場合
(4) 競業により、企業の利益を損ねる場合
 4 第1項の業務に従事後、「副業・兼業申出書」の記載内容に変更があった場合は、2週間以内に会社に変更届を提出すること。
(以下・略)

「Bさんの場合は、業務上残業の必要性があるにも関わらず拒否していますから、規程で定める『労務提供上の支障がある場合』に該当します。従ってバイト時間の制限や許可の取り消しが可能です」
「分かりました。結論として会社はB君に対して、今後どのような扱いをしたらよいですか?」

(1)A課長からBに対して、残業が必要な理由を説明し、業務命令として残業をさせること
(2)A課長の業務命令にも関わらず残業をしない場合、D部長はBに対して次の説明を行い、残業をするように促すこと
(a)上司の業務命令を聞かないことで人事査定の評価が悪くなり、昇進や賃金額に影響があること
(b)業務命令違反として懲戒処分の対象になりうること(就業規則への明記が必要)
(c)就業規則の定めにより、バイトの許可を取り消すもしくは制限(平日のバイトを禁止するなど)すること
(3)上記(c)の扱いをしない場合、Bにバイト勤務時間の変更届を提出させた上で、残業期間終了後、改めて勤務日のバイトを認めるか否かなどを検討すること