社長は、1時間未満の残業時間切り捨ては「就業規則で決まっているから」の一点張りだったが社長は、1時間未満の残業時間切り捨ては「就業規則で決まっているから」の一点張りだったが…(写真はイメージです) Photo:PIXTA

定められた労働時間を超えて働くと発生する残業代(時間外手当)。「今月は忙しかったから、たくさん残業したな」と思って給与明細書を見ると、思ったよりも残業代が大分少なかった……。上司に確認してみると「ウチの会社は残業代を1時間単位で計算するから、1時間未満は切り捨てになるんだよ」と言う。しかし、残業代って普通は1日単位ではなく、1カ月の残業時間の合計で計算するものなのでは?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
地方都市にある機械部品の製造業。従業員数100人。
<登場人物>
A:30歳。大学卒業後他社の総務部に在籍していたが、今年6月甲社の総務課に転職した。
B:35歳。総務課長でAの上司。
C:60歳。甲社の社長。
D:今年5月から甲社の顧問社労士になった。

中途採用で入社したところ、
激務で初日から残業するハメに

 甲社の総務課はこれまで課長と4人のメンバーで業務をしてきたが、今年3月末で2人が退職し、Aが6月1日付で中途入社した。Aの前任者は既にいないため、代わりにB課長から業務の引き継ぎを受けたが、初日から仕事が山積みで早くも残業をするハメに。その理由は昨年の9月、3件の新規取引先が決まったためである。製造部門は増産に向けて3人の正社員と5人のパート社員を中途採用することで体制を整えたが、総務課のメンバーは増員がなく、増えた仕事をこなすために10月以降残業をするようになった。その上欠員1人分の業務を分担する必要があったので、残業時間はさらに増えた。

 7月の給料支給日。甲社に入って初めての給料日だったAは、B課長から給与明細書を渡されると、すぐにトイレに駆け込み、洋式トイレにどっかりと腰を下ろし、明細書の内容をつぶさにチェックした。

「えーと……基本給30万円。通勤手当2万円。これはOKだ。あとは残業代か」

 明細書の「時間外勤務手当」の項目に目を落とすと、「22時間:5万1568円」と書かれていた。

 Aは首をひねった。

「おかしいな、もっとたくさん残業した気がするんだけど」