前回の記事「ジャニーズと戦った元文春編集長が、記者会見を見て感じたこと」で述べた通り、ジャニーズ再生にはジャニー氏の悪事と事務所が抱える課題の全容解明が必要です。それなくして、性被害者への補償は的確には行えないし、スポンサーもタレントを起用したCMの解禁を再考することはできないでしょう。

 にもかかわらず、かつて文春との「ホモセクハラ裁判」において、ジャニー氏本人に性加害についての聞き取りを詳しく行った顧問弁護士も、同事務所でマスコミ対策を一手に担ってきた白波瀬傑前副社長も出席していません。

 取締役会がまともに開かれず、前社長の藤島ジュリー景子氏さえほとんど出席していなかったという幹部の集まりの内情を知っているのは、故人となったメリー氏・ジャニー氏姉弟と、前述の矢田氏、小杉氏、白波瀬氏の3人くらいしかいないはず。そうしたキーパーソンが出席しないのでは、不都合な事実を隠蔽するのが前提の記者会見だと疑われても仕方がありません。

一定の評価ができるのは
ジュリー氏の手紙だけ

 私は今回発表された新しい再生構想にも、目の前のことをやり過ごそうと、めくらましをしているという印象を持ちました。記者会見で発表された新構想について、私なりの疑問と感想を述べてみます。

 まずジュリー前社長の手紙。手紙の中身は彼女の真情を吐露していたと思います。彼女が詳しい実情を知らなかったのは本当だろうし、ジャニー氏やメリー氏の暴走を止める力があったとも思えません。引き続き100%株主として取締役に残り、被害者への法を超えた補償のために人生をかけること、代表権を返上し、事業承継税制の活用で免除されていた相続税を全て支払うことを公言しました。

 再生構想の組み立て方によっては安穏と暮らせるかもしれないのに、「それはやってはいけないこと」と考えたのであろうことも含めて、彼女なりの謝罪の意志が感じられました。

 しかし、他の関係者の発言には疑問をいくつも感じました。