国鉄分割民営化は成功したが
ジャニーズの再生案はかなり不安
今回のジャニーズ再生構想は、1980年代の国鉄解体のスキームに似ています。旧国鉄が残した莫大な負債は清算会社を作って清算し続け、一方で負債の負担のない新会社であるJR各社は、新たな事業やサービスで信頼を取り戻す。実際、この仕組みは成功しました。
しかしジャニーズの場合、清算会社となるSMILE-UP.(スマイルアップ)に100%株主であるジュリー氏が取締役として残ります。それに対して、エージェント契約制に移行し、社名をファンから公募するという新しい会社の原資は、どこから調達するのでしょうか。まだ役員も発表されていませんが、新会社で必要となる最低限の資本金は、東山社長らが準備するしかないはずです。国鉄分割民営化のときは国から税金を原資とする援助がありましたが、今回は当然ありません。
しかも、芸能を看板とする会社である以上、タレントが演技や踊り、歌を練習する場、CMやドラマ、バラエティの打ち合わせをする場は必要です。これらはジャニーズ事務所やその関連施設で行われていたはずで、運営には少なからぬ費用がかかっていたことでしょう。SMILE-UP.はタレントのマネジメント・育成業務から撤退すると公言していることもあり、新会社が以前からあるジャニーズの施設を使用することは、モラル的にも難しいと思います。
そうなると、新たに場所を探して物件を購入したりする必要がありますが、この原資は誰が工面するのでしょうか。ジャニーズ事務所には1000億円超の資産があると言われています。しかし、それはSMILE-UP.に留まるジュリー氏に委ねられているものです。
また、ジャニーズには離合集散したグループも多数存在します。彼らの楽曲には、複数のミュージシャン、作曲家、作詞家、編曲者などに関わる著作権が存在します。プロモーションビデオとなると、さらに細かく、カメラマンやプロデューサーなどにも権利が分散します。ジャニーズが多くを管理していたこれらの権利をSMILE-UP.から新会社に移行し、すでに事務所から退所したメンバーなどに対して権利関係の確認・調整を行うといった手続きは、短期間でできる作業では到底ないでしょう。