米国では新型コロナウイルス禍初期の記録的な退職者の増加が落ち着き、この夏には離職ペースが大幅に鈍化した。歴史的に見て、米経済にとっては気がかりな動向だ。直近3回の景気後退(リセッション)期には、いずれも離職率が低下した。退職は仕事への不満の表れであると同時に、従業員が次の職を見つけられるという自信の表れでもある。離職率が下がるということは、労働者が自分の将来性に不安を抱いている可能性がある。だが今の米国人は、それ以外の理由(柔軟性が高い、給料が良い、仕事に満足している)からも仕事を辞めずにいる。このことから、退職者が減少しても景気後退の兆候であるとは限らないことが分かる。そして求人件数が失業者数をなお大きく上回っている現在、景気拡大には持久力がありそうだ。