岸田政権は国内での投資拡大や、重要物資である半導体の工場立地を後押ししようと規制緩和を検討している。10月末に発表される予定の新経済対策にも盛り込まれるようだ。米欧各国は、台湾や韓国に偏在する半導体の生産拠点を、自国回帰させている。日本もこの波に乗り遅れるわけにはいかない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
グローバル半導体企業の日本投資が急増
9月下旬、オランダの半導体製造装置メーカーASMLが、2024年後半をめどに北海道に技術支援拠点を開設すると報じられた。今後5年間で同社は、日本国内の人員を4割増やす方針という。
現在、ASMLは「極端紫外線(EUV)」を使った、半導体の露光装置を製造することができる世界で唯一の企業だ。また、米アプライドマテリアルズなど有力半導体製造装置メーカーも、わが国の事業運営体制を強化する。世界の半導体関連の先端企業が、相次いでわが国にやってくる。
その背景として、台湾辺境の緊迫化など地政学リスクの高まりは無視できない。戦略物資である半導体の製造拠点が台湾から分散する動きは加速している。半導体を含めた先端分野で米中対立が先鋭化する恐れもある。そうしたリスクに備え、世界の有力企業は、半導体部材や半導体製造装置に強みを持つわが国に拠点を構築している。
わが国の産業政策の修正も、重要なプラス要因になっている。半導体の製造能力強化に向けた、政府の支援方針はかなり明確といえる。こうした先端分野の産業集積を足掛かりに、わが国経済が好転する展開を大いに期待したいものだ。