北海道、熊本、広島…投資と政府支援が相次ぐ
わが国では今年4月、ラピダスが北海道千歳市に工場を建設すると発表した。トヨタやソニーなど国内大手8社が出資するラピダスは、次世代の回路線幅2ナノメートルのロジック半導体の製造を目指している。25年4月までに試作ラインが稼働する予定だ。2ナノレベルのロジック半導体の製造には、従来とは異なる技術が必要であり、技術者の手配などかなり困難なハードルをクリアしなければならない。
ラピダスは先行者利得を目指し(ブルーオーシャン戦略)、かなり意欲的な計画を描いている。それに伴い、ASMLだけでなく、アプライドマテリアルズや米ラムリサーチも日本における事業体制を強化する。米IBMやベルギーの研究機関imec(アイメック)もラピダスと提携を強化する方針だ。ラピダスへの期待の高さがうかがえる。
設備投資の負担が大きい半導体工場の建設には、政府の支援強化も重要だ。すでにラピダスに約3300億円の支援を行っているが、追加支援の可能性も高い。
他に、熊本県の菊陽町でソニーやデンソーと合弁で工場建設を進めるTSMCにも約4760億円を支援している。また、三重県でキオクシアと米ウエスタンデジタルが進める設備投資には約929億円を助成した。さらに、横浜市にサムスン電子が開設する研究施設にも助成が行われるようだ。
また、広島県で米メモリ半導体大手マイクロン・テクノロジーが行う設備投資には、最大1920億円の補助を行うという。マイクロンは旧エルピーダメモリの広島工場を活用し、最先端のメモリ半導体製造を目指している。12年、エルピーダは破綻し債務不履行に陥った。それは経営の失敗だった。
政府の支援に慎重な姿勢の半導体分野の専門家もいる。ただ、米国は今後5年間で日本円にして7兆円規模の、欧州委員会は30年までに6兆円規模の支援を行う方針だ。わが国も米欧に見劣りしない支援策をもって、半導体、量子計算や光通信技術など最先端分野で投資を誘致する必要があると考える。