半導体を制する者がEVを制す#2Photo by Fusako Asashima

世界最大のファウンドリ、台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループが建設中の熊本半導体工場の要員計画が明らかになった。巨大新工場の要員計画は、日本の半導体人材の「年収相場」や「需給のひっ迫度」に大きなインパクトを与える重要な方針だ。特集『半導体を制する者がEVを制す』の#2では、建設中の第1工場で働く1700人の「職種別の内訳」を公開するとともに、建設が確実視されている第2工場まで含めた要員計画の全貌を明らかにする。人手不足が深刻な職種、つまり将来的にニーズが高まりそうな職種はどれなのか。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

半導体人材の相場を左右する
TSMC新工場の要員計画の全貌

 熊本県菊陽郡菊陽町――。世界最大のファウンドリ、台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループ(ソニーG)らが出資する半導体新工場の建設地では、夜遅くまで作業音が鳴り響いている。

 当座のところ、新工場のゴールラインは2024年末に製品出荷を実現すること。それまでの試運転期間を考慮すると、猶予は全くない。突貫工事で建設が進められているのはそのためだ。

 本格稼働を睨んで、新工場を運営するJASM(TSMCの製造子会社。ソニーG傘下のソニーセミコンダクタソリューションズとデンソーも出資)は、戦力となる多種多様な職種の人材の獲得を進めているところだ。

 ダイヤモンド編集部は、半導体人材の供給に特化した人材サービス会社がJASMに対して提案した「要員計画の詳細」を入手した。TSMCの巨大新工場ともなれば、その要員計画は国内半導体人材の「年収相場」や「需給のひっ迫度」を激変させるくらいの甚大なインパクトを持っている。

 実際に、JASMの要員計画は半導体関連企業が注視しているデータである。採用強者であるJASMがエンジニアの待遇を吊り上げれば、国内半導体業界全体がその相場に引きずられるからだ。それに加えて、周辺エリアの競合他社はエンジニアの引き抜き・転職リスクに備えなければならない。

 それでは、JASMがどのような職種の人材をどの程度欲しがっているのか。半導体業界注目の「新工場1700人の職種別内訳」を公開する。また、近隣での新設が確実視されている「熊本第2工場」まで含めた要員計画の全貌を明らかにしていこう。