日米欧で次世代半導体への投資合戦が過熱
近年、日米欧の主要先進国は、台湾や韓国に偏在する半導体の生産拠点を、自国内に回帰させる方針を明確にしている。先端分野の半導体は、経済から安全保障、脱炭素などあらゆる分野で重要性が高まっている。その生産を支援するために、主要先進国は多額の補助金なども使い始めている。
その要因の一つとして、台湾リスクは重要だ。9月28日、中国の習近平国家主席は「祖国の統一実現は歴史の必然だ」と演説するなど、中国は台湾への圧力を強めている。日米欧の政府や企業は、台湾の半導体大手TSMCからの調達を分散する必要に迫られている。
ChatGPTなどAI(人工知能)の高性能化は今後も進む。中央演算処理装置(CPU)に加え、次世代の画像処理半導体(GPU)の国内生産能力を強化することは、国の産業競争力にも直結する。各国の取り組みを見ると、米国はTSMCから大型の投資を取り付けたし、わが国もそれに続いた。ドイツをはじめEU加盟国も、産業政策の修正・強化を急いでいる。
TSMCは米国アリゾナ州で工場を建設中だ。TSMCの対米投資額は400億ドル(約6兆円)にも上る。回路線幅4ナノメートル(ナノは10億分の1)のチップを生産する計画で当初は24年の工場稼働を目指していたが、25年に延期した。その要因は、半導体市況の一時的な低迷に加えて、専門人材の不足などがあるだろう。TSMCはASMLに半導体製造装置の納入を延期するよう要請したようだ。一方で、TSMCは回路線幅3ナノメートルの半導体を製造する第2工場の建設も発表している。
他方、米テキサス州では、韓国のサムスン電子が大規模な投資を計画している。中期的な計画として同社は11の工場を建設するようだ。1工場当たりの投資金額は2兆円程度とみられている。
また、欧州ではドイツのドレスデンでTSMCが工場を建設する予定だ。ドイツ政府は50億ユーロ(約7900億円)の補助金を支給し、TSMCは他社と合弁で車載用の半導体などを生産すると報じられている。