子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では、船津氏のこれまでの著書から抜粋して、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。
思考を整理できなければ、上手に書くことはできない
これまでの連載では、子どもの「話す力」についてお伝えしてきました。今回は、「書く力」について見ていきましょう。
ものを書くことは、思考力、論理力、語彙力、表現力といった様々な要素が必要となる非常に高度な技能です。
事実、欧米では「エッセイ」が非常に重要視されており、たとえばアメリカでは高校からはすべての教科でエッセイを書く課題が出され、評価の対象となります。
○×式のクイズやテストもありますが、それは全体の中のごく一部だけで、重要なのはエッセイです。
与えられた課題について、自分はどう考えるのか、その根拠は何か、どう説明するのか、いかに読み手にとってわかりやすく飽きさせない文章を書けるのか、といった点が評価されます。
また大学受験でも、受験生の人柄や思考力を測定する上で有効なツールだという理由から、エッセイが非常に重視されているのです。
そもそもエッセイとは、日本でいうと「小論文」に近いニュアンスです。
まず、与えられた課題に対して自分が伝えたいことを最初に書きます。そしてその理由や裏付ける根拠を3つ書き、最後に結論です。序論、理由・根拠が3つ、結論で合計5つの段落に分かれているので「5パラグラフエッセイ」と呼ばれます。
この技術を習得するには、思考の整理や論点の作り方、要約力といったことが必要になり、社会に出て特定のテーマについての報告文章や要約などの事務的な文章を作る時にも役立つのです。
しかし、要求されるレベルが高いだけに多くの子どもがエッセイの課題が出ると「何を書いていいのかわからない」「文章が思いつかない」と言います。
なぜそうなるかというと、「自分の考えを整理して人に伝える」経験が不足しているために書けないケースが多いのです。
ここでは、家庭でできる書く力のトレーニング方法について見てみましょう。
1. 物語を「最初」「真ん中」「最後」に分けて話す
書く力を育てるのに有効なのが、「話すこと」。特に「説明」です。説明がうまい人は、書くことも短期間で向上させることができます。
説明上手にさせるには、ふだんから「相手にわかりやすく順序立てて話すこと」を意識してもらうことです。
題材は何でもよく、たとえば小さい子どもであれば「桃太郎」や「一寸法師」などの昔話を口頭で再現してもらいます。
重要なのが、物語の「最初」「真ん中」「最後」と、物語の構成・段階を意識させることです。
それにより、わかりやすく順序を追って説明する、という力がついていきます。
2. 楽しいお題を与える
小学校低学年くらいまでは、子どもは書く力が十分ではありません。
そこで、「もし世界中のどこでもいけるとしたらどこに行く?」といった想像力を刺激する質問を投げかけます。
子どもは「ハワイ」「フランス」などと答えるでしょう。そうしたら、「なぜハワイに行きたいの?」と理由を聞いてください。
「海で遊びたいから」「暖かいから」などと子どもは答えるでしょう。そこで、さらに質問します。
「どうして海で遊びたいの?」と聞けば、「泳ぐのが楽しいから」「波を飛び越えるのが楽しいから」と理由を探します。
こうして思考がまとまったら、文章を書かせてみるのです。
「もし世界中のどこにでも行けるとしたら、私はハワイに行きます。ハワイは1年中暖かいので、いつでも海で遊ぶことができます。私はずっと水泳を習っているので泳ぐことが大好きなのです」と、理路整然とした文章が書けるようになります。
3. パソコンで文章を書かせる
小学3~4年生からはパソコンで文章を書く練習をさせるとよいでしょう。
紙に書くのはめんどうだという子どもでも、パソコンだとおもしろがって書くようになります。
最初はタイピングソフト(ゲーム)で、ブラインドタッチができるように教えてあげてください。
多くの子どもは自分で練習して、文字を打ち込めるようになります。子ども専用のメールアカウントを作って、メールを書く方法を教えましょう。
(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)