以上、簡潔ながら、アフガニスタンにおける人間関係をめぐる3つの事例を見てきた。「ウチ」と「ヨソ」の区別、政府高官と衆生の人々との間の途方もない距離、そして外部者からの内政干渉に対する激しい反応といった事例群は、私たちがターリバーンが実効支配するアフガニスタンと向き合う上で、多くの教訓を提示している。とりわけ、現在、ターリバーンはイスラームに反すると思われるほど、女性の教育・就労に対して厳しい制限を課している。これらのターリバーンの主張を一方的に認めることはできないが、何故そのようなことが起こるのか、を理解することは問題解決への糸口を見いだすための第一歩である。

アフガニスタンにおける
女性の人権侵害問題

 アフガニスタンについてよく伝えられることとして、女子生徒の中・高等教育の制限や女子大学生の通学一時停止措置など、女性の人権侵害の問題が挙げられる。

 しかし、ここで、私自身、アフガニスタンの女性たちとほとんど接点を持ってこなかったことを正直に告白しなければならない。アフガニスタンの伝統的な価値規範では、女性の尊厳や貞淑を守ることが男性の名誉と直結している。したがって、外国人男性である私がアフガニスタンの女性たちと交流を深めることには、必然的に大きな制約が伴った。

 書物をひもとくと、アフガニスタンの男性は誇り高く、名誉を重んずると書かれていた。中でも、アフガニスタンにおける紛争の種は、「ザル・ザン・ザミーン、すなわち金・女・土地」に集中しているとよくいわれる。つまり、現地で金・女・土地の問題に巻き込まれると、日本に生きて帰ることが危ぶまれるということだ。私はこうした部族文化を考慮し、アフガニスタンの女性たちに軽口を叩いたり、現地の男性から侮辱と受け止められたりするようなことは極力控えた。

 とはいえ、アフガニスタンの女性たちに関して、私の限られた知識の中で、多少なりとも言及しておく必要があろう。

 まず、アフガニスタンの女性と一口にいっても、都市と農村、高等教育を受けた者とそうでない者、パシュトゥーン人とハザーラ人などの民族的差異によって、その特徴は大きく異なる点に留意が要る。