出身によってCFOの得意分野は変わる
――朝倉さんは業務の関係でCFOの方と面談されることもあるかと思いますが、CFOにはこうあってほしいとか、要望ってあったりしますか?
朝倉 私の場合は主にスタートアップの方とお会いすることが多いですが、スタートアップの場合、CFOの最大の仕事は資金繰りなんですよね。その最たるものがエクイティファイナンス(企業が新株発行を通じて、事業のために資金を調達する行為)です。
たとえば「某スタートアップがシリーズBラウンドで〇十億円の投資を受けました」といったニュースを見かけることがありますが、そういった第三者割当によって資金を調達することとか、あるいは最近ですとベンチャーデットと言って、未上場のスタートアップに対して資金の貸付を行う金融機関なども出てきています。そういった何らかの資金を獲得すること。
同時に本業を通じてどうやって資金を創出するか、あるいはコストコントロールするかを考えること。スタートアップのCFOの場合、やはりここに仕事の主だった部分は集中しがちだな、と思います。
――となると、やはり多岐に渡った知識や理解力が求められますね。
朝倉 今日もたまたま、某スタートアップCFOの方と話をして来たんです。CFOにはどういう素養が求められるかとか、どういうバックグラウンドの人が活きるのか、など。とはいえ、やはり何でもかんでもパーフェクトにできる人がいるわけではないんですね。
ひと口にCFOと言っても、投資銀行だとか金融機関出身の人もいれば、監査法人や大企業の経理部長出身という方もいる。あるいは他のスタートアップのCFO出身の方もいらっしゃいますが、みんなそれぞれに得手不得手があって、何でもかんでもできる人はいません。
たとえばエクイティでの資金調達には非常に経験があるけれども、上場のプロセスは経験したことがない、といった具合に。
また、スキルだけが高ければそれで良いというものでもありません。たとえば外資系の投資銀行などで、激しい競争関係に揉まれてきた人の中には、スキルセットは非常に高い一方で、コミュニケーションスタイルが極端な方もいる。未上場企業のCFOの場合、わりと管理部門の統括をすることが多いのですが、そうすると経理のみならず、人事部門や総務部門も統括することになります。
たしかにCFOは外部の投資家や経営チームに対してズバッとものを言うことが必要なんですけど、それ一辺倒だと、管理部門の現場の人は疲弊してついてこなくなります。結果、ボロボロと離職者が出る。そういうことはけっこうあるんですよ。
やはり1人で全部まかなうことは難しいので、CFO自身が不案内なことはチームで補ってやっていこうという組織づくりが大事なのかなと思っています。
徳成 たとえば経理畑から来た人はIRのための投資家巡りが不得意だったりする。私自身は経営企画畑から来たので経理や会計が深くはわかっていない。出身に応じていろいろですよね。かつ、会社の規模とか状況によって、求められるものも全然違ってくる。
もちろん1つの会社に長くいて、全部できるようになってCFOに就任する、というのも良いですが、それはなかなか難しいので、違う業種の会社のCFOとなって、自分の強みとしたいところ、あるいは補いたいところを身に付けていく、というパターンも今後は増えていくと思います。
そういう意味では、自分らしいCFO像を目指していくらでも成長できる、と言える。CFOは終わりがない仕事と言えるかもしれません。
朝倉 一通りスキルを身に付けた、と思っても、社会は常に変わっていっていますから、次々と新たなスキルが求められてきますしね。
徳成 CFOの仕事って、最終的には不確実性をマネージする、みたいなことじゃないかと思っています。そもそも企業経営って、所詮は不確実なことだらけです。それが最後は、お金とか決算といったもので確定される。するとそこで結論が出る。最高益で株価最高値、あるいは逆に経営不振、倒産、なんてことになるわけですよね。
けれどもその不確実性を取らないと、リターンは出ない。だからCFOはどこまで不確実性を取れるのか、資本と現金を防御的に使うのか、積極的に使うのか。そのアクセルとブレーキの踏み分けが本業であり、CFOの仕事のいちばんおもしろいところだと思います。