中古市場は拡大トレンド
リノベで流通を活性化 

◆CASE2 空き家×リノベーション◆ リノバンク

 前回解説したように、居住目的のない空き家349万戸のうち、すでに腐朽や破損のある空き家が約101万戸。一方で、居住目的のない一戸建てのうち、腐朽や破損がない空き家は約150万戸と推計される。またすでに腐朽や破損があっても、改修などを行えば居住可能になる物件もあるはずだ。 

「空き家問題」にDXで挑むベンチャーたち、畳む・生かす・引き継ぐ需要に見出した商機芝田旅人(しばた・たびと)
リノバンク代表取締役。大手銀行、証券会社を経て、不動産の売買プラットフォームを手掛けるFANTAS technologyに参画し、空き家事業に従事。2023年3月にリノバンクを設立し、FANTAS社より空き家事業の一部を事業譲受。Photo by Hiromi Tamura

 リノバンク代表の芝田旅人氏は、そうした空き家をリノベーションすることで市場に再流通させ、中古住宅市場を活性化させることに大きな可能性を感じている。

「これまで日本の住宅は新築神話に支えられてきました。しかし最近は新築にこだわらない消費者も増加傾向にあり、中古住宅市場は拡大トレンドにあります」

 その理由に挙げられるのが、土地や建築費の高騰で、一般世帯では新築住宅の購入が困難になりつつあること、一方で技術の進化により、新築同様のリノベーションが可能になったこと、さらに国や自治体も空き家の流通促進に力を入れ始め、多くの自治体では補助金の提供を行っていることなどだ。

 国土交通省の調査によると、借家世帯の持ち家への住み替えの場合、中古住宅を選ぶ世帯は、2003年の6.2%から18年には21.8%と3倍以上に急増している。

「これまでは、ネットで中古住宅案内を調べた場合、物件の売却価格は出ていても、リノベは必要か、リノベする箇所はどこか、その場合の費用などの情報は掲載されていませんでした。つまり、ある程度手を加えなければ購入してもすぐに住めない場合もありますが、購入者はそうした情報を知らないという状態にありました」

 リノバンクは、そうした情報不足の解消と、消費者がより気軽に中古住宅を購入し、リノベーションできるよう、物件とそのリノベーションの価格を検索できるポータルサイト「たすリノベ」を提供している。「たすリノベ」は、独自開発のAIにより、不動産売買情報とその物件のリノベ箇所と費用を算定、購買者と事業者の情報格差を埋め、物件と関連優良事業者の検索を支援するサービスだ。

 さらに空き家所有者に、所有物件の価値をウェブで簡単に算定できる「コダテノバリュー」を展開、国の「空き家対策モデル事業」に採択されている。これまでに全国11の自治体と連携し、160件の現地調査を実施した。

 同社が不動産の売買プラットフォームを展開するFANTAS社より分離独立したのは23年3月。まだ産声を上げたばかりだが、芝田氏は使命感を持ってこの仕事に取り組んでいるという。

 次の世代に対して何ができるか考えたときに、皆が家を持てるようにすることが、空き家問題の解決策なのではないかと思います」