自分の好きなことより他人の意見に従ってしまう、選択と決断が苦手、決めてから後悔しがち……。そんな人におすすめなのが、2022年10月26日に発売の『私はすべて自分で決める。』(チェ・フン著 李明華訳)だ。著者は自分のことを「決められない症候群」と呼ぶほど、自分の選択と決断に自信がなかった。そんな著者がどうやって、「決断のプロ」になったのか、選択と決断のための具体的なノウハウを凝縮したのが本書だ。原書の『選択と決定はタイミングだ』は韓国本国で発売2週間で韓国大手書店で自己啓発ジャンルで1位になるなど注目を集めている。「この本は自分の人生の主役として生きる方法を教えてくれる」「より良い選択をしたいと願う人たちにすすめたい本」など絶賛と共感の声が相次いでいる本書。今回は、本書の発売を記念して特別に本文より一部抜粋、再編集して紹介する。(初出:2022年11月19日)
転職のときの「譲れない条件」は?
転職のためひたすら履歴書を送っていたころ、ある中堅企業の一次書類選考に合格し、面接を受けることになった。試験当日、面接官は私にこう質問した。
「年収が20パーセントほど下がっても、うちに来る気はありますか?」
非常に鋭い質問だった。志望動機を聞かれ、新たな分野と新しい会社に挑戦したいといかにもな受け答えをしたところ、そこを突かれたらしい。圧迫面接の洗礼をもろに受け、私はひどく戸惑った。
「それは……新しいことを学べるなら、そのくらいのことは受け入れられます」
もちろん本心ではなかった。誰が今の給料を下げてまで転職したいと思うだろうか。
すると、思ったとおり、面接官が突っ込んできた。
「正直ではないですね。そのお答えは、新卒の就活生が言いそうなことです」
(面接はここまでか……落とされるに決まってる)
とたんに顔が赤くなり、頭が回らなくなって、なんと言ってこの場を切り抜ければいいかわからなくなってしまった。
面接が終わり、私は後輩と転職するときに考慮すべき点について話し合った。
人によってちがいはあるが、第一に収入、第二に職場でのポジションと役割、第三に会社の将来性という後輩の話にうなずきながら、自分はどんな基準で転職先を探すべきか悩まずにはいられなかった。
後輩の話を聞いて、自分の転職先をどんな基準で選ぶべきか考えたが、条件を絞り、それに順位をつけていくのは容易ではなかった。
どの条件も譲ることはできないように思えた。給料を上げたいし、ポジションは今より上で、将来性のある会社がいい。
だが、3つの条件すべてを備える転職先を探すのは難しいうえに、そんな会社があったとして、私を受け入れてくれるかどうかもわからない。
そのため、3つの条件のうち1つが欠けていても、ほかの2つの条件を備えた会社を選択する必要がある。
だが、私は自分が何を重視し、何を譲れるのかさえわからなかった。どんな会社で働きたいのかも決められず、私は自己確信が足りないことを改めて思い知った。