南アフリカで電力不足が深刻化、インフレ再燃リスクもくすぶり景気の不透明感強まるPhoto:PIXTA

南アフリカ経済は、足元はインフレ率も低下しプラス成長を続けている。しかし、折からの電力不足は景気の足を引っ張り続けている。加えて、通貨安、食料インフレ、財政悪化懸念が重なり、先行き不透明感が強まっている。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

電力不足がここ数年深刻化
景気の足を引っ張る

 このところの南アフリカを巡る話題と言えば、8月に同国で開催されたBRICS首脳会議にロシアのプーチン大統領が出席するか否かに注目が集まったことだろう。

 これは、ロシアによるウクライナ侵攻に関連してICC(国際刑事裁判所)がプーチン氏に対する逮捕状を発布したことを受け、仮にICCに加盟する同国を訪問すればプーチン氏が身柄を拘束される可能性があったためだ。そもそもICC加盟国には、逮捕状が発布された人物を逮捕しなければならない義務がある。

 しかし、最終的にプーチン氏はオンラインでの参加にとどめてそうした事態は避けられた。そして、その後の南ア政府による対応が国際問題に発展することも避けられた。

 他方、ここ数年の同国経済は商品高を受けた世界的な石炭価格の高騰に加え、火力発電所の相次ぐ故障による発電能力の低迷で電力不足が深刻化している。全土で計画停電が行われることで、幅広い経済活動の足かせとなる状況が続いている。