「いいね」が増幅、外界が見えなくなり
他人を攻撃する~SNSとネット論壇の功罪

 西脇は、勝訴確定までの道のりを振り返って、こう話した。「SNSには、増幅機能があるような気がするんです。何かをきっかけに三浦さんを好きになったユーザーは、三浦さんを好きな自分を肯定したい。だから三浦さんの全ての言葉が『よく言った』『さすが三浦先生』と肯定されて、お互いに『いいね』し合ってマッチポンプのように自信を増し、濃縮しながら循環する世界。それは三浦さんのファンの周りだけの正義なんですが、外界が見えなくなって、自分たちと違うものは徹底して攻撃するようになる。それが健全な言論かというと、違いますよね」

「ネット論壇と呼ばれるTwitter(X)でも、いかに瞬時に短い言葉でインパクトのある意見を多く言えるかを競うような、テクニックの競い合いになっている。本当に学術的な研究を積み重ねた人ならば、土台があるので時流には流されませんが、表面を浮遊しながら波に乗っていく人が世論を扇動していく。Yahoo!ニュースの3~4ページのボリュームを超えるものを受け取りきれず、気持ちのいい解答をくれる人をみんなが期待する。今はそんな社会になっていますよね」

 勝訴が確定した西脇がマスコミに向けて出したコメントは、短いが、しかし彼の血の滲む実感から絞り出されたものだった。「公に発言することの責任を、三浦さんには自覚してほしいと思います」

「公に発言する言葉というのは、最後は必ず誰かにぶつかる石なんです。その先に誰がいるのか、その速さはどうなのか、事前に一瞬でも考えるべきで、それが責任を持った発言です。SNSなどでとにかく早く良さそうなところへボールを投げるような瞬間芸ではない。表現の自由には責任も伴っています。無責任に人を傷つける発言が容認されるままでは、表現の自由それ自体が揺らぐことになってしまう」