テクノロジーが加速させる
スペースシェア文化
実は不動産業界でも、スペースシェア市場に進出を図った大手企業はある。しかしその多くは結果を出すことができていない。
「多くの物件を抱える大手の不動産会社は、ウェブサイトさえあれば自前で事業展開できるように思えるかもしれませんが、実際はそう簡単にはいきません。個人間の取引をつなぐプラットフォームは、不動産の情報掲載サイトとはまったく違ったロジックでできています。
当社でいえば15分単位で貸し借りが成立する仕組みや、キャンセル対応、保険の加入など、裏では複雑なシステムが走り、それらを専属のエンジニアが管理しています。不動産業の片手間という感覚だと、成功しづらいのです」
現在、内装の整備からプラットフォームへの掲載まで請け負い、物件をシェアスペースとして貸し出せる状態にする企画開発と、オーナーに代わって予約時や貸し出し時の対応や備品補充などを行う運営代行とを担う「スペースモール」がグループに参画。企業所有のスペースを中心に180件超の運営代行を実施しており、今後の伸びを期待している。
また、最近特に力を入れているのが自治体向けサービスの展開だ。
「公共施設の予約はいまだにアナログで手続きが面倒なところがあります。それらをスムーズに借りられるサービスをサブスクリプションで提案しています。とある市のケースでは、それまであまり予約がなかった公営バーベキュー会場に、導入後1週間で100件超の予約が入るなどの成果が出ています」
そうした事業の先には、日本で増え続ける空き家や遊休不動産の問題という社会課題があるという。
「スペースシェア文化が広がり、新たなマッチングの形がどんどん生み出されれば、放置されていた既存物件にもスポットライトが当たり、新たな経済循環を生み出せるはずです。今後もテクノロジーの力でスペースシェアの可能性を追求し、事業を次世代のインフラへと育てていきたいです」