不動産テックの進化とともに、不動産の流通・管理から生活品質の構造を刷新する新しいサービス市場が著しく成長している。今回と次回は、スペースや生活用品をシェアする「シェアリングエコノミー」に焦点を当ててみたい。特に最近注目されているのが、駐車場や民泊のようなCtoC需要の領域でスペースを貸し借りするビジネスだ。
CtoC事業に意外なニーズ
「スペースマーケット」
スペースマーケット代表取締役社長。2000年、NTT東日本に入社。主に法人営業企画、プロモーション等を経験した後、2006年にフォトクリエイトに参画し、新規事業、広報、採用などを担当。2014年にスペースマーケットを創業。Photo by Hiromi Tamura
不動産業界においては賃貸事業の延長としてのシェアリングの概念は以前からあったが、主にBtoB領域に留まってきた。しかし近年では、SNSの普及などと相まって民泊のようなCtoCのサービスも認知度が高まっている。
スペース領域の新たなけん引役となってきたのが、スペースマーケットだ。
メイン事業は、プラットフォーム上に掲載された約2万件にも及ぶあらゆるスペースを、1時間以上15分単位で貸し借りできる「スペースマーケット」の運営で、スペースを借りたいゲストと貸したいホストとのマッチングを行い、成果報酬を得るビジネスモデルとなっている。
貸し借りされるスペースの種類は多様で、会議室や一般住宅、スタジオ、飲食店、スポーツ施設などがあり、中には廃校、無人島といったユニークなものもある。ゲストの利用目的もさまざまで、会議やテレワーク、パーティーやオフ会、ヨガやダンス、YouTubeの撮影など枚挙にいとまがない。
代表を務める重松大輔氏が2014年にサービスを立ち上げた当初は、大企業の会議室を休日に別の団体が借りるといったBtoBの利用を想定していたが、ふたを開けてみれば個人での利用も思いのほか多かったという。
「ちょうど日本でもハロウィンがイベントとして広まりだしたタイミングでした。仮装をして渋谷の街に繰り出し、盛り上がる人々がいる一方で、混雑は苦手、帰りにはメイクを落としたい人たちもいて、そうしたゲストが仲間とハロウィンパーティーを楽しむ場所として利用してくれるようになりました。ほかにも、古民家がコスプレーヤーの方たちの撮影に使われるなど、意外なニーズがいくつもありました」
そうした背景からCtoC領域での集客にも力を入れ、自社からも積極的に新たな企画を仕掛けるようになった。
「最近のトレンドとしては、フリーランスの美容師やトレーナーなどが、美容室やジムを持たず、オーナーからスペースを借りて事業を行うシェアサロンやシェアジムのニーズが増えています。そこに対応したまとめページをつくるなどして、常にトレンドを意識した情報発信を行っています」