本日のテーマは、「押しの強い人や目上からの誘いをうまく回避する方法」です。
超ミニマル・ライフとは、「どうでもいいことに注ぐ労力・お金・時間を最小化して、あなたの可能性を最大化する」ための合理的な人生戦略のこと。四角大輔さんの新刊『超ミニマル・ライフ』では、「Live Small, Dream Big──贅沢やムダを省いて超効率化して得る、時間・エネルギー・資金を人生の夢に投資する」ための全技法が書かれてあります。本書より、「他人に奪われる時間」を最小化するためのたった一つの考え方についてご紹介します。
どうでもいい誰かに毎日を──いや人生を──奪われないために
デジタルテクノロジーの急進によって、コミュニケーション量が爆発的に増え続けている。どうでもいい誰かに毎日を──いや人生を──奪われないようにすべく、一つ一つのアポをシビアに取捨選択しないといけない。
なのに多くの人がアポだらけの予定帳を見て、「人から求められている」と、自己肯定感が満たされた気になっている。目的なく「人に会ってるだけの日々」なんて、自分の人生を生きていないようなもの。実は筆者にも、そんな経験がある。
断りやすい欧米vs断れない日本社会
駆け出しプロデューサーの頃、まだ半人前という自信のなさから、全てのアポにYESと即答していた。会議や打ち合わせなどを含めると1日10本なんて日もあった。当然、終わるのは夜。そして7本目を超えたあたりから記憶がない……。
実際、「同調性」を重んじ、相手の気持ちを思いやるのが礼節とされる日本社会では「断る」のは難しい。
だが、毎日がアポで埋め尽くされるとどうなるか。
「自分は仕事をしている!」と勘違いしてアドレナリン中毒となり、忙しさに酔ってしまうのだ。
そしてタスク過多であらゆる業務が滞り、締め切りは守れず、遅刻の常習犯になっていく。自分の時間が消えてプライベートの約束はドタキャン続きで、部屋はぐちゃぐちゃ。
ちゃんと眠れないから頭と体は常に重く、余裕もないからミスが多発して信用を次々と失っていく。
そんな経験から、もしあなたが「断りたいのに断れない」状況にあるなら、その気持ちは痛いほどわかる。そして日本社会では、ほとんどの人が同じ悩みを抱えている。
ちなみに「個人主義」の欧米では、誘いを断っても「気まずさ」は全くない。だから、自分の時間と自分自身を大切にしやすい。それができて初めて自己肯定感は高まる。
文化の違いで人生が決まる──これは本当だと思う。
ここからは、そんな文化的プレッシャーへの防御策を授けていく。時間を他人に明け渡さず、自分を守り抜くための技術だ。
当メソッドでは特に──テクノロジーを活用して──筆者が最も苦労した、押しの強い人や目上からの誘いを回避する手立てを伝えたい。
血の通わないデジタルツールの活用
仕事のコミュニケーションの大半が、メールやチャットといった「文字ベース」で行われるようになって久しい。
幸運なことにこれらのツール──特にメールは──強引なアポを断る際に使い勝手がいい。アポを含むオファー全般への辞退においては、文章力こそがあなたを守る頼もしい盾となる。
忘れてはいけないのが、人は誰もが「人情」なるものを持っているということ。
人情こそが人を人たらしめるが、時に足かせとなる。だからこそ、相手の情感が伝わってくる肉声や顔を見ながらの対話では、なかなか「NO」と言いづらい。強引な人ほど情に訴えかけてくる傾向があるから厄介だ。
この「断る」という難しいコミュニケーションを、対面や電話で行おうとすると、次の4つの会話スキルが求められる。立場が上の相手であれば緊張するからより難易度が高くなる。
②どんな投げかけにも対応できるアドリブ能力
③空気を和ますための笑いのセンスと笑顔力
④失礼のない言葉使いと立ち居振る舞い
メールというレガシーツールの威力
4つ全てをそつなく実践できるようになるには年季が必要だ。相手が歳上なら間違いなくあなたよりも上手──だから、口頭での駆け引きはなるべく避けた方がいい。
文章であれば、④さえクリアしていればいいので会話スキルがなくても何とかなる。
しかも文面であれば人情に流されず、ある種の冷徹さを持てて、断るためのロジックと戦略もじっくり練ることができる。そして「断り作業」は、チャットよりもメールの方が断然やりやすい。その理由を、3つのポイントにまとめておこう。
①相手が「冷静になりやすい」
おわかりのように、目上の人からの打診やお願いごとを辞するのは容易ではない。断り方を間違えると、相手の気分を害したり反感を買ってしまう可能性が高いからだ。
それを難易度が高く人肌を感じる「会話」ではなく、血の通わないデバイス上の「テキストという体温のない記号」を通して行うことで、相手の感情をクールダウンさせやすくなる。
②メールの「オフィシャル感」を利用する
チャットやSNSのメッセージといった、即レスが求められるカジュアルなコミュニケーションツールが爆発的に増えるにつれ、メールが「公式ツール」の地位へ登りつめた。
断るという難易度の高いコミュニケーションでは、「当方の謝辞」と「先方への敬意」をしっかり伝える必要がある。そのために、世間がメールに抱く「オフィシャル感」を利用するのだ。
③「確かな定型文」をミスなく使える
口語と文語は、もはや違う言語だ。反射神経が求められるチャットもまた違う言語だと言える。
そもそも口述の定型文なんて覚えられないし、チャットでは長い定型文を送りにくい。メールだと、事前に時間をかけて抜かりのない定型文を準備できる。
さらにメールだと、即レスが不要で落ち着いて向き合えるため、口頭やチャットだと生じやすい「あいまいさや誤解」「失礼な言葉使い」をなくせるという大きなメリットもある。
なお、筆者はSlackやLINEやMessengerといったチャットツールを仕事で使うのをやめて、全てをメールに統一している。
その1つに、「チーム内や社内のコミュニケーションはSlack」「チーム外の人とはメール」と、ツールが分かれることによる面倒や混乱を避けるというのがあった──「2つ3つではなくワンツールに」というのがミニマル主義の基本哲学。
だが実は、ここで書いたお断り術における利便性こそが大きな理由でもあったのだ。