アポは、その場で日時まで決めてしまう
とはいえ、アポの打診は会話の中で受けることも多い。
もしそれが、「あなたが求めていたアポ」であれば、その場で日時まで決めてしまおう。
3人以上の予定を合わせる場合は、メールやチャットが便利だが、2人だけで決められる場合はメールやチャットを往復させるのは非効率だ。必ず、1回の対面か電話で決めてしまうこと。
口頭での常套句(じょうとうく)とメール定型文
相手との関係値や過去の仕事ぶり、または提案される日程や議題から明らかに不要と即決できる時もある。
その時は、前著『超ミニマル主義』で伝授したマジカルワード「そこは前々から決まっている別件がありまして」と即答しよう。
それで相手が引き下がってくれたならば、それは「大した用事ではなかった」ということだ。多くの場合「その翌週だとどう?」や「いつなら大丈夫?」と粘られる。
その場合は、次のような常套句を伝えて「検討する」というスタンスでいったん持ち帰り、その後のやりとりをメールに移行するのだ。
「ご依頼の週は、仮の先約がいくつかあるため確認の必要があります。わかり次第メールでお戻しします」
「この先のスケジュールは、チームに預けている部分が多いため、確認してメールでお返事します」
ポイントは、「自分の一存では即答できない」「第三者の判断で不可かもしれない」というニュアンスを込めること。ちなみにこれは、アーティストが「事務所/マネージャーに確認します」という回避テクニックと同じ。
そして「返答期限の確認」と、即答できないことに関しての「謝罪の言葉」も忘れずに。
これを参考に自分なりの短い常套句をつくっておき、躊躇せず口にできるよう普段から反復しておくこと(日本社会ではこれくらいの備えをしておいた方がいい!)。
持ち帰った案件はメールにて丁重にお断りすることになるが、事前に作成する「定型文」が活躍するのはその時だ。
自分で定型文をつくってもいいが、ここは優秀なテクノロジーの力を借りよう。
ブラウザの検索窓に「アポ 断り方」と入れると、各界のプロの作成した「角が立たない断り文」が次々に出てくる。もしくは対話型AIに「アポを断る丁重なメール文を作成して」と投げれば見事な定型文を提案してくれる。(当メソッドの最後に、愛用の「Spark AI Mail」搭載のAIが自動作成した文に手を加えた比較的カジュアルな定型文も載せておく)
その中から、あなたの感覚にフィットする最も丁寧な文体を選ぶこと。そして血の通った文にするべく、自分なりのアレンジを加えながら少しずつ崩していくといい。
お断りはお願いの何倍も難しい
最も丁寧な文体をベースにする理由は、対応範囲が広くなるからだ。それを適度に崩せば、柔らかめの文体の方がいい相手に使える。文章というのは、固い方向へアレンジするよりも柔らかくする方が容易だからである。
そして相手が年配であればあるほど、丁寧すぎるくらいの固い文体に弱い傾向がある。礼節をわきまえた隙のない姿勢には、誰もが反感を持ちづらいもの。
そういった定型文には、相手の理性に働きかけて「感情を抑えてもらう」という効果がある。
そうやって完成させた、独自の「鉄板のお断り定型文」を保存しておき、使うたびに相手や状況に合わせて改変する。定型文をブラッシュアップし続けることで──それは最強の盾となり──この先何年もあなたを守り続けてくれるだろう。
特に、目上の人から乱暴に時間を奪われやすい若い世代にとっては、防御シールドのごとく機能してくれるから、ぜひ準備しておいてほしい。
そこまで徹底しても、「それでも何とかお願いしたい」という相談が来た場合は受けた方がいい。経験上、予想外にいい展開が待っていることがあるからだ。
「何とかしてみますので少しお時間をください」と返答し、翌日メールで「30分か45分」のスケジュールを提案してみよう。
筆者は、国民的人気となった複数の音楽アーティストのプロデュースを通して断り方の奥技を体に叩き込むことができた。
その経験から──無名時代に「取り上げてください」と毎日お願いしていた苦労より──ブレイクスルー後にオファーが殺到して、日夜「申し訳ありません」とお断りする方が、何倍も大変で高度な配慮が必要ということを学んだ。
もしあなたが属するコミュニティや組織、または社会でブレイクスルーを果たした時、もしくは上の立場に立った時にはこの話を思い出して、このメソッドに立ち返ってもらえたらと思う。
株式会社◯◯
○○ 様
平素よりお世話になっております。
先日は、ご丁寧なお電話をいただき、ありがとうございました。
さて、ご相談いただいていたアポの件ですが、スケジュールを捻出すべくチーム内で何度もすりあわせたのですが、想像以上の繁忙期につき不本意ながら、向こう1ヵ月は難しいことが判明しました。
せっかくの機会をいただいておきながら、残念でなりません。
今回は、こちらのリソース不足という、たいへんお恥ずかしい事情によってご希望に沿うことができず誠に申し訳ありません。
このような返答となってしまったこと、深くお詫び申し上げます。
どうかご理解くださり、ご容赦いただければ幸いです。
今後とも何卒、宜しくお願い申し上げます。
◯◯株式会社
◯◯
(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)