子どもからあまりにも純粋な質問をされて、答え方に困ることってありませんか?
毎日、毎年、たくさんの子どもの疑問と向き合う塾の先生は、どう対応しているのでしょうか?
『子どもが「学びたくなる」育て方』の著者であり、およそ2万人の生徒を直接指導してきた「知窓学舎」塾長・矢萩邦彦氏が、1つのアプローチを紹介します。(本記事は書き下ろしです。構成・撮影/編集部・今野良介)
これは、僕の塾で男女問わず毎年出る質問です。
あなたも、誰もが、一度は考える問題なのではないでしょうか。
でも周りの大人からはぐらかされたり、難しすぎて理解できなかったり、まったく納得いかなかったりという経験をするなかで、次第に疑問に思わなくなってしまったのではないでしょうか?
いざ自分が子どもからそんな質問をされると、ちゃんと答えるには宇宙物理学だとか高度な知識が必要だと思って、尻込みしてしまうこともあるでしょう。
そこで僕がおすすめしている方法は、「解答」ではなく「応答」です。
たとえば「空はなんで青いの?」と聞かれたときに「でも夕焼けは赤いよね?」と答えれば、「たしかに!」となって思考が進んでいきます。
このとき「君はなんで青いと思う?」のように、聞かれた質問をそのまま返してしまわないようにするのがコツです。そもそもそれがわからないから聞いているわけで、これでは思考が進みませんし、何より「せっかく質問したのに……」とがっかりさせてしまいかねません。
この場合なら、「じゃあ、宇宙の内側の端っこはどうなっていると思う?」みたいに聞いてみるわけです。
「答え」を教えようとせずに思考実験してみる
僕の場合はこんな思考実験をします。
かつてローマの詩人ルクレティウスが考えた方法を現代風にアレンジしたもので、こんなふうに子どもに問うてみるのです。
これに対して、ほとんどの場合、
「吸い込まれる」
「跳ね返ってくる」
「めり込む」
などの答えが返ってきます。
であれば、そこには何かがあることになりますから、そこは本当の端っこではないことになります。つまり、宇宙には端もないし、外側もないかもしれない、という話になる。
もし、
「変形する」
「変質する」
「消える」
「ワープする」
のような答えをするならば、そこは宇宙の端と言えるかも知れません。
今のところ、宇宙の外側にはビッグバンが起きる前の状態「量子真空」があって、僕たちの宇宙とは別のビッグバンでできた宇宙がたくさんあると考えられています。
また、ビッグバンは光速より速い爆発だったため、宇宙には光が届いている範囲と、まだ届いていない範囲があり、よくわかっていません。
でも、安易にこうした「知識」を教えるよりも、自分の頭の中だけであれこれ考えたほうが、ずっと大きな学びになる可能性が高いと思います。
もし「解答」を示すにしても、あれこれ対話してからの方が、その解答に対して感動や疑問が湧き起こりやすくなるはずです。