同時多発的な危機によって世界の安定が脅かされ、米国は力と関心を振り向けることを強いられている。ロシアのウクライナ侵攻、イスラム組織ハマスとイランによるイスラエルへの攻撃、そして太平洋地域における中国の脅威。これらはいずれも邪悪な帝国主義的体制の大きな野望の産物だ。西側諸国は幻想をつくり上げてきた。その幻想がこれらの脅威の台頭を許し、不意を突かれる状況を招いた。特に三つの幻想が、米国および欧州諸国の考え方に深く染みついている。一つ目の幻想は、戦争の責任は指導者にあり、問題の諸国がわれわれの敵になっている原因は悪い指導者のみにあるというものだ。アントニー・ブリンケン米国務長官は2022年9月、国連安全保障理事会でロシアのウクライナ侵攻について、「1人の男がこの戦争を選択した。そしてそれを終わらせることができるのも1人の男だ」と述べた。