世界の人口は、5億人から10億人に倍加するのに250年かかった。しかし、35億人から70億人になるのにはたった40年しか要さなかった。爆発的な人口に対し、食糧の増産は限度があり、資源はただただ減り続ける――。
その警告的な内容は刊行当初から反響を呼び、後に石油ショックが起こるなど現実味を増すごとにさらなる注目を集めてきた驚異のベストセラー『成長の限界』。刊行から40年の時を経ても色褪せない未来への知見とは?
ダイヤモンド社100年の歴史の中から未来へ読み継ぎたい100冊を紹介する連載第2回です。
1972年時点で見通された
世界の成長の限界
今回紹介する『成長の限界』は、原書も邦訳もほぼ同時、1972年5月に出版されました。今から41年も前のことです。世界中で次々に翻訳され、各国で大きな反響が起きました。そして現在まで版を重ね、読み継がれている驚異的なロングセラーとなっています。
1972年5月発行。シンプルな装丁は古さを感じさせない。地のモチーフは地図、航空写真。
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本書が論証する主題は三つ、第一に世界の人口は幾何級数的に増大すること、第二に食糧の増産は算術級数的な増加にとどまること、第三に地下資源は有限であること。すなわち、世界の成長には限界がある、ということです。
幾何級数は等比数列、算術級数は等差数列のことです。等比数列は金利の複利計算と同じです。100万円を年利5%で回すと1年後に105万円、2年目は105万円の5%が付加されていきます。この数列が等比数列です。資産価格の現在割引価値を求める際にも使いますね。
さて、この主題だけなら英国の経済学者トマス・マルサス(1766-1834)が200年近く前の『人口論』(1798)で書いています。マルサスは「したがって不可避的に貧困が発生する」という結論を導きます。
ローマ・クラブのレポートは、当時の動態的な理論によってシミュレーションを行ない、明確に時期まで予測しました。動態的理論とは、スタンフォード大学で開発されたシステム・ダイナミクスと呼ばれる理論で、ある系(システム)の中の要素はすべて相互依存関係があるとして図示するのです。経済学で言えば一般均衡理論のような考え方です。本書にはこれらの図が多数収録され、幾何学的に理解できるように構成されています。
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資源の有限性についても時間を理論的に割り出しています。人口増加は本書の予測どおりに推移しましたが、資源についてはあまり当たっていません。たとえば、石油の「静態的耐用年数」を31年、金を11年、水銀を13年などと予測し、すぐに枯渇するとしています。世界が驚いた点ですが、いずれも外れました。これは当時の確認埋蔵量が少なかったためです。