岸田首相Photo:Anadolu Agency/gettyimages

必要性も費用対効果も低い“ばらまき”
金利上昇に備え急ぐべきは財政改革

 岸田文雄政権は11月2日、事業規模37.4兆円程度、財政支出21.8兆円程度の総合経済対策を閣議決定した。物価高への対応や持続的な賃金引き上げの環境作りなどを掲げているが、景気の回復局面での経済対策実施には疑問が多い。

 とりわけ議論を呼んでいるのが所得減税だ。

 物価高への負担を緩和するとして、2020年度から2年間で3.5兆円ほど増えた所得税と住民税の税収を納税者である国民に直接還元するというものだ。

 具体的には、税収の増加分と同等額を投じて24年6月から1人当たり年4万円(所得税と住民税の合計、被扶養者を含む)を減税する。さらに1兆円超を使い、非課税世帯に1世帯当たり7万円を追加給付し、給付額を10万円に増額する。

 減税額は、家計の毎月の平均消費支出の3%分に当たり、直近の物価上昇の打撃をほぼ緩和することになる。

 だが実際に家計が所得減税の恩恵を実感することになるのは来年6月で、当面の物価上昇には役に立たない一方で、家計全体では貯蓄は高止まりしていることを考えると、必要性も費用対効果も低いばらまき的な政策だ。

 他方で政府債務が積み上がり財政状況が厳しい中、日本銀行の金融政策の正常化が近づき、さらなる金利上昇が予想される。所得減税を行う余裕はないはずだ。