財政再建とインフレ警戒
2つの反対論は正しいか
岸田文雄首相は、10月20日、与党に所得減税の検討を指示し、11月初旬にまとめる総合経済対策にどのような形で「減税」が盛り込まれるかが、最大の焦点になってきた。
しかし与党内からも、コロナ禍からの経済回復が本格化し景気が拡大基調に乗る中での減税の実施には、疑問視する声が上がる。
反対論の代表的な主張としては、「税収上振れ分を財源に充てると言うが、GDP比2倍もの政府債務の返済に上振れ分はまず充てるべき」というものがある。
もう一つのタイプの反対論は、「経済全体の需給ギャップがプラスに転じた今(需要超過)、財政拡張の必要性は乏しい」という主張だ。「(減税は)むしろ現在のインフレ傾向をさらに加速させてしまうのではないか?」との懸念からのものだ。
2つの減税反対論のうち、前者の「財政再建論」に対しては、コロナ財政の巨大さが際立った過去3年間だっただけに、メディアなどの論調も後押しする立場が多いようにみえる。
後者の「インフレ警戒論」も昨年来の急激なインフレが大きな社会問題化していることもあって、支持する声は少なくないように思える。だがこの財政論議、上滑りする懸念がある。