高瀬敦也 著
ただ単に「これをやって」「OK」と交わされる会話は、それ以上の何かを生み出すことはありません。「自分はあの人に甘えている」「自分はあの人に甘えられている」という共有認識があることに意味がある、という点を強調しておきたいと思います。
甘えるというのは「私はあなたを必要としています」「あなたと継続的な関係を構築したい」「元々あなたとは良い関係ができていると考えています」という意思表明です。冒頭で「人に甘えるということは、家族や親族、長い付き合いのご近所さんには許されてもビジネスの現場ではあまり使えないと思われている」と言いました。裏を返せば「あなたを親族や馴染みのご近所さんのように親近感を持っています」というラブコールです。
「甘える甘えられる」という関係からは、余計な損得抜きに一人では生まれ得なかったものがこの世に放たれていくことになります。一人で考え、理屈ありきの関係性で進む仕事よりも、はるかに経済合理性が高いのです。
そして、甘えるというのは「自分の無力さを知る」ということでもありますし、「人のありがたみを知る」ということでもあります。甘えることによって、人との結び付き、社会との繋がりは多く太くなります。これは自分の心にゆとりを生みますし、いざというときの心の支えになります。これが「甘える力」というスキルです。