そう考えると、まず自分のキャパシティーを考えずに済みます。何かはじめるとき、多くの人が自分のキャパシティーを考えて、その限界から逆算をはじめてしまいます。「能力的にそんなノウハウがない」とか「時間的に忙しいからできない」と考えるのがオチです。誰かに甘えることを前提にすると、能力も時間も理屈的には無限に拡張できます。無限に拡張できると思えば、さまざまな挑戦に対して柔軟に対応できるようになります。
また、キャパシティーを拡張すること以外に、自分では気付かなかったアイデアやヒントを得られます。これは「人を巻き込む」という物事の進め方で、詳しくは前著『企画』でお話しているのでよろしければ読んでいただければと思います。「巻き込む」というニュアンスは、「自分がすることの伴走者だったり当事者にまでなってくれる」ということです。
ほとんどの人は、人の能力は「個の中にあるもの」と認識しています。しかし、実際に人の能力というものは「周囲にいる人たちの能力も含めた総合力」です。たとえば有名な建築家はたくさんの建物をつくっていますし、有名な料理人はたくさんのお店を開いてたくさんのお客さんをもてなします。でも、すべてその有名人の個人の能力で完結していることはありえません。映画も分かりやすい例でしょう。撮影技術やCG、セットのデザインや構築、そして宣伝など様々な人のノウハウが提供されています。でも多くの人には「○○監督の作品」と認識されます。
このように、キャパシティーはもちろんですが、アイデアやノウハウなども周囲の人が提供している場合が多くあります。でも世の中の人は、出来上がった映画や建物や料理は「○○さんの成果だ」と個人の能力として認識します。人を巻き込んだ仕事は、結果として個人のノウハウや財産にもなっていきます。