2回にわたってミラノという都市に起こった「意味のイノベーション」を紹介してきましたが、今回は世界的なデザインイベント「ミラノデザインウィーク」を取り上げます。この成り立ちに注目すると、意味のイノベーションのある重要なアプローチにたどり着きます。そのアプローチを支えるミラノの文化に触れながら、都市の再生・変革に必要な条件について考えます。
意味のイノベーションで生まれた世界最大規模のデザインの祭典
前回はミラノ市北東部の地区「NoLo(ロレート広場<Piazzale Loreto>の北側<Nord>の略称)」で進む、住民主導型の「意味のイノベーション」を紹介しました。この例では、問題解決ではなく価値創造に重きを置くアソシエーション文化という土壌が効いている点に注目しましたが、実はミラノ全般においても、この文化を背景にした動きが見て取れます。
今回は、世界最大規模のデザインの祭典といえる、ミラノデザインウィークの成り立ちに、意味のイノベーションを見いだします。
さて、ミラノのプロダクトデザインといえば、日常生活で使われる家具・雑貨が中心です。ミラノ市の北部40キロの所に、その生産地として発展してきたブリアンツァという街がありますが、1950年代以降、この地の起業家とミラノのデザイナーたちが協力してミラノデザインの「黄金時代」を築いていきます。ミラノデザインウィークはこの流れに沿っています。
ミラノデザインウィークとは、家具の国際見本市「ミラノサローネ(SALONE DEL MOBILE MILANO)」と、市内で開催される500にも及ぶデザイン展「フオーリサローネ(サローネの外の意)」が複合したイベントの総称です。そこで展示されるデザインは家具や雑貨にとどまらず、自動車や家電といった分野など、多岐にわたります。下の地図では2019年における、展示の分布を示していますが、左上のミラノサローネから、ミラノ市内の各地区に広がって開催されているのが分かります。
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