HISPhoto:PIXTA

新型コロナウイルス禍が過去のものとなりつつあるが、多くの業界においてコロナ前への完全な逆戻りは起きず、新たな事業環境に突入している。そこで上場約50社、15業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業によって業績の明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移を基に、「嵐」から「快晴」まで6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「【月次版】業界天気図」。今回は、2023年9月度の旅行代理店編だ。

海外旅行市場の回復が遅れ、3社とも“負け越し”

 旅行代理店の主要3社が発表した2023年9月度の月次業績データは、以下の結果となった。

◯HIS(エイチ・アイ・エス)の旅行総取扱高
 9月度:前年同月比270.4%(170.4%増)

◯近畿日本ツーリスト(KNT-CTホールディングス〈HD〉)の取扱額実績
 9月度:同128.4%(28.4%増)

◯阪急交通社(阪急阪神ホールディングス〈HD〉)の総取扱高
 9月度:同208.7%(108.7%増)

 3社とも前年実績を大幅に上回った。特に、HISと阪急交通社の数値は、平時ではあり得ない増加率だ。これは、コロナ禍で業績が大幅に悪化したので、そこからの反動増による「見せかけの好業績」の可能性が高い。そこで、4年分の月次業績の動向を見ながら、コロナ前の水準と比較した回復度を確認していこう。3社のうちコロナ前の水準まで回復している会社はどれくらいあるだろうか?

 また、「海外旅行」「国内旅行」「訪日旅行」と事業別に深掘りすると、残念な結果が判明した。円安や燃油高の影響で、海外旅行市場の回復が遅れ、3社とも“負け越し”ているのだ。そして、この影響もあって3社の直近の決算では優劣が鮮明となっている。次ページで詳しく見ていこう。