ANAの営業利益が過去最高!旅客数は戻ってないのになぜ?JALもコロナ前より増収増益にPhoto:PIXTA

新型コロナウイルス禍が過去のものとなりつつあるが、多くの業界においてコロナ前への完全な逆戻りは起きず、新たな事業環境に突入している。そこで上場約50社、15業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業によって業績の明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移を基に、「嵐」から「快晴」まで6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「【月次版】業界天気図」。今回は、2023年9月度の航空編だ。

旅客数は回復途上なのに復配・増配はなぜ?

 航空の主要2社が発表した2023年9月度の月次業績データは、以下の結果となった。

◯ANA国際線(ANAホールディングス〈HD〉)の旅客人数
 9月度:前年同月比194.6%(94.6%増)

◯ANA国内線(ANAHD)の旅客人数
 9月度:同128.2%(28.2%増)

◯JAL国際線(日本航空)の旅客人数
 9月度:同164.7%(64.7%増)

◯JAL国内線(日本航空)の旅客人数
 9月度:同123.3%(23.3%増)

 ANAもJALも前年実績を大幅に上回った。特に、国際線の増加が目立つ。海外に行く人も増え、また、外国人旅行者(インバウンド)の増加で全国の観光地が大賑わいであるといったニュースもよく見聞きするようになった。

 旅客数の増加もあり、2社とも23年4~9月期(24年3月期第2四半期)の業績が絶好調だった。ANAHDは営業利益が1297億円(前年同期比312.6%増、約4.1倍)で上期として過去最高を記録。純利益も932億円(前年同期比377.0%増、約4.8倍)に急回復した。好決算を受けてANAHDは24年3月期の年間配当予想額を1株30円にすると発表。新型コロナウイルスショックを経て実に5年ぶりの復配だ。

 一方、JALは本業のもうけを示すEBIT(税引前損益から利息などの財務収支を除いたもの)が912億円(前年同期2億円)、純利益が616億円(同21億円の純損失)と、こちらも大幅な増益を記録。業績の通期予想を上方修正し、年間配当金も従来予想の1株40円から同60円に増配した。

 ただ、航空は新型コロナウイルス禍で大きな打撃を受けた業界だ。次のページで詳述するが、ANA国際線・国内線、JAL国際線・国内線のうち、旅客数がコロナ前の水準まで回復している事業は、実は一つもなかった。

 ではなぜ、これほど利益を伸ばし復配・増配できたのだろうか? 時系列で数字の推移を追いながら、探ってみよう。