戦争前から高まっていた「反ユダヤ感情」
そのほかに、日本国内で反ユダヤ思想を持つ者らが、ユダヤ教の礼拝所である シナゴーグやユダヤ人学校などに対して、脅迫をするということがありえます。ユダヤ人学校とは、特定の場所というよりは貸会議室などを利用してユダヤの文化を継承していく取り組みのことを指します。私が現役の公安警察だったときも、シナゴーグやユダヤ人学校が爆破予告や殺害予告、不審者の接近の被害を受けたことが実際にありました。今も 警察が公表していないだけでそういった 被害が既に起きてる可能性もあります。私のときは、犯人への手がかりをつかむことはできませんでした。
イスラエル・ガザ 戦争が始まってから、アメリカのデトロイトでは シナゴーグの事務方のトップの女性が殺害されるという事件が発生しています(10月22日付CNN)。犯人は捕まっていないのですが、おそらくパレスチナを支持する勢力の犯行であろうと考えられています。実は、今回の10月7日に始まった戦争よりも前から、反ユダヤ感情というのは、ヨーロッパやアメリカで高まっていました。礼拝中のシナゴーグが襲撃される、あるいは、爆破予告されるといったことが増えていました。
反ユダヤ感情の高まりは、欧米における極右やネオナチの台頭と関係していると思われます。そして、背後にはユダヤ人支配に対する怒りのようなものがあります。社会の上層にユダヤ人が多いことから、「ユダヤが牛耳る社会が自分達を苦しめている」という考え方が下層で広がりを見せているという構図です。そうした下地がある中で、今回の戦争が始まってしまったので、世界各地のユダヤコミュニティにとって非常に危険な状態なのです。