「スラム化リスク」は
旧耐震の大規模マンションの方が高い
さて、タワマン2030年問題について「タワマンは通常のマンションと違い、大規模修繕の手法が確立されていない」という問題を指摘する声もあります。この点はどう考えたらいいのでしょうか?
タワーマンションが今世紀に入ってから大量に建造されるようになってきたこと自体は事実ですが、高層ビル自体は昭和の時代からたくさん建設されています。オフィスビルや商業ビルには、マンションのように12年目に行う大規模修繕が法律で定められているわけではありません。しかし、当然ながらそれぞれのビルの判断で適切に修繕工事が行われています。
具体的には10年から15年周期で外壁修理が、15年から20年周期で空調設備の更新が、そして25年から30年周期でエレベーターの取り替えが行われます。
修繕工事の観点で言えば、タワマンの多くは大手ゼネコンが最新の設計を行っていることから、工事の手法がないことが問題になることはないでしょう。問題は、その工事にかかる費用をマンションの管理組合が捻出できるかどうかです。
そう考えると、2030年問題が指摘するマンションのスラム化リスクは、実はタワマン以上に築年数が古い大規模マンションの問題の方が大きいと捉えられます。
マンションに関わる法律は、時代を経るごとにアップグレードされてきたのですが、逆に言えば古い法律の時代に建てられたマンションの場合、マンション全体を維持するだけの前提が整っていないケースがあります。
象徴的なポイントをお話しすると、1981年5月までに建築確認が行われた旧耐震基準の大規模マンションの方が本当は修繕すべき箇所が多く、その割には修繕積立金は不十分な状況になっているというケースが多いはずです。