「修繕金不足でタワマン崩壊」説が
浮上している理由
そしてタワマンの2030年問題とは、これらのデメリットの中で修繕積立金不足によってタワマン自体の運営が崩壊するのではないかという危惧になります。
実は2030年という年数には、ピンポイントでその年に何かが起きるという意味はありません。2000年頃からブームになったタワマンの多くが2030年には築30年を迎え、その頃から大規模修繕が難しくなるのではないかという観測が、この問題提起の本質です。
マンションは建築基準法で竣工後13年までに外壁の全面打診調査を実施することが定められています。このことから多くのマンションでは12年周期で大規模修繕が行われています。
1回目の大規模修繕はそれなりにマンション管理組合が確保している修繕積立金で何とかなるものですが、問題は2回目以降です。これにはいくつか理由があるのですが、一つは経年劣化に伴い、後になるほど修繕が必要な箇所が増えること。二つ目に、積立金がもともと少ないマンションが散見されること。そして近年の工賃の上昇です。
特に問題視されるのは、2番目の積立金不足の要因です。新築マンションを販売する際には、修繕積立金などの毎月出ていくお金が少ないほうが売りやすいものです。そのため販売会社が積立金の月額を低く設定する傾向があるために、後になってお金が足らないことが管理組合で問題になるケースが頻発しています。
また、逓増(ていぞう)方式といって最初のうちは積立金が少なく、5年ごとに段階的にといった具合に最終的には毎月の積立金が当初の5倍に増えるように決められている分譲マンションも増えています。こういったマンションを購入すると、後になればなるほど出費が増えることが生活を圧迫します。
このあたりの問題は国土交通省もきちんと指導をしていて、2010年代以降の新築タワマンでは築30年あたりまでは大規模修繕の資金が足らなくなることはほぼない計画になっています。それでも問題は二つあって、それ以前に建てたタワマンが築30年を迎える際に修繕積立金が不足するのではないかという懸念と、それ以降のタワマンでも2030年までに予測されるインフレを考えると修繕金が不足してしまうのではないかという懸念があるのです。
40代ぐらいまでの社会人のみなさんは、人生の中でインフレをこれまで経験したことがないという世代だと思います。ですから修繕積立金の計画にインフレが考慮されていないことはある意味当然で、それこそが新たな落とし穴になりつつあるというのがタワマン2030年問題の本質かもしれません。