経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだった。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
タワマンへの投資と節税
昨今の富裕層は、都心のタワーマンション(以下、タワマン)を積極的に購入しています。
実は富裕層の多くは、地に足がついた暮らしを好むのか、戸建てに住んでいるのですが、それでもタワマンを買うのは「不動産投資」と「相続税対策」のためです。
都心のタワマンは世帯年収が1500万円を超える共働き世帯(パワーカップル)に人気があり、高い家賃収入が見込めます。
相続税対策としての
タワマン投資
たとえば東京都港区のタワマンの場合、広さにもよりますが高層階なら家賃は30万円を下りません。
さらに賃貸不動産をもつことで相続税対策になります。このしくみを活用した手法が、「タワマン節税」と呼ばれるものです。
いびつなタワマンの評価額
タワマンの取引価格を見ると、階層が高くなるほど高値で設定されています。都心の場合、1階と最上階では、同じような広さでも1000万円単位で価格差が出ることが普通です。
ところが、相続税のルールでは、土地の所在地と床面積が同じであれば、何階であっても基本的には同じ評価額なのです。
相続税の計算で有利に働く
また、マンションの場合、敷地の評価額は同じマンション内の戸数で分ける計算をします。
そのため、戸数の少ない小規模なマンションよりも、戸数の多いタワマンのほうが、1戸あたりの敷地の評価額は低くなりやすいです。
このような理由から、タワマンの高層階を買って賃貸に出せば、相続税を計算する際、時価よりもかなり低い評価額に抑えられるメリットがあるわけです。
評価額よりローン残債
のほうが大きくなる
このようなタワマンを、ローンを組んで購入したらどうなるでしょうか?
相続税申告書には、タワマンがプラスの財産として、ローンの残債がマイナスの財産として計上されます。そして多くの場合、タワマンの評価額よりもローンの残債のほうが大きくなります。
たとえばタワマンの評価額が5000万円で、ローンの残債が8000万円であれば、マイナス3000万円ですから、タワマンには相続税がかからず、さらにはほかの財産にかかる相続税も引き下げてくれるというわけです。
「タワマン節税」を
国税が狙う
タワマンなどの不動産を活用した節税方法には、実は国税当局が目を光らせています。
国税局や税務署から「著しく不適当」と判断され、時価に基づいて不動産を評価されるケースが多数出ているのです。
このように時価で評価計算されると、相続税の負担は確実にアップしますし、多額の追徴税がかかる可能性が高いです。
“行き過ぎた節税”に
3億円超の追徴課税
こうした国税の処分に対して、納税者が訴訟を起こすケースも出ているのですが、2022年4月には、納税者が敗訴となる最高裁判決がありました。
その結果、訴えを起こした納税者に対して3億円を超える追徴課税が確定したのです。
この判決がおよぼす影響は未知数ですが、“行き過ぎた節税”について国税による監視の目が今後ますます強化されることは間違いないでしょう。
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。