プレゼンテーターたちが書籍の内容を熱く解説
読書会のメインテーマである「人と組織の課題解決のための7つのステップ」は、書籍『人材開発・組織開発コンサルティング』の第3部に書かれている。第1部と第2部で、人材開発と組織開発の定義と、それぞれの基礎となる知識・理論、代表的な実践が紹介されており、第3部はその具体的なプロセスを詳細に説明している。この第3部が、人材開発・組織開発コンサルティングの「キモ」と言えるだろう。
7つのステップは、「(1)出会う(2)合意をつくる(3)データを集める(4)フィードバックする(5)実践する(6)評価する(7)別れる」――(1)「出会う」は、コンサルタントとクライアントの「はじめましての打ち合わせ」ではなく、「ともに何かを成し遂げられるかもしれない」という予期を相互に共有し合うこと(2)「合意をつくる」は、プロジェクトの全体像やスケジュールをコンサルタントとクライアントがお互い合意し、プロジェクトをキックオフすること(3)「データを集める」は、コンサルタントがクライアント組織の現場を調査してデータを集めること(4)「フィードバックする」は、コンサルタントが行ってきた調査のデータ・分析結果をクライアントにミーティングを通してフィードバックすること(5)「実践する」は、フィードバックミーティングで合意した人材開発・組織開発の解決策を具体的に実践すること(6)「評価する」は、実践したことがどのような効果をもたらしたのか評価すること(7)「別れる」は、クライアントが自走できるようコンサルタントが促して別れること――書籍では、そう説明されている。中原教授は、「課題解決のためには、できる限り、体系的かつシステマティックに『課題解決プロセス』を回していく必要がある」と述べ、そのプロセスが、この7つのステップに相当している。
そして、今回の読書会では、7つのステップのサマライズ(まとめ)を、6人のプレゼンターが分担して行(おこな)った。「約30名の立候補者の中から、属性や経歴を踏まえ、企業人事からアカデミックなお仕事の方まで、なるべく違う分野で活躍されている方々を選出させていただきました」(広瀬さん)。
第1回のこの日は、ステップ1からステップ4の前半までを3人のプレゼンターが担当した。持ち時間はそれぞれ15分。各自がパワーポイントで作成した資料を使いながら、担当パートの要約と、自分が得た学びの内容を伝え、最後に中原教授に質問を投げかける。大量枚数の資料は各人の個性があふれ出ていて、あるプレゼンターによるグラフィック・レコーディング(グラレコ)を使った資料には、参加者のチャットで「分かりやすい!」「とても印象的」といった反響があった。
各プレゼン後には10分間の意見交換の時間が設けられ、オンライン読書会の参加者が5人ずつのブレイクアウトルームに分かれて、プレゼンを聞いての感想や自分の仕事の課題や悩みを語り合っていく。発言に参加しない「耳だけ」の人のルームもあり、そこから自由に各ルームの様子を見学できるため、聴いているだけでも学びにつながるようだ。プレゼン中から中原教授も参加者もチャットを盛んに使っていたが、実際に意見交換したことで深掘りができたのか、ブレイクアウトルーム終了後はさらに多くの感想や質問がチャットに投稿されていった。質問のひとつひとつに中原教授が丁寧に答えていく様子は、さながら、実際の授業を覗いているような臨場感があった。
開始から3時間が経過し、第1回の読書会は終了。クロージングを迎えても質問や感想が飛び交い、「相手との対話」や「フィードバックの難しさ」についての意見が交わされていたが、中原教授が「ノーコンフュージョン、ノーラーニング」と述べたのが印象的だった。現場の混乱や変化はネガティブに捉えられがちだが、実はそれこそが組織を変える要素になり得るという。ネガティブからポジティブへの発想転換は、HR領域に関わる人たちに勇気を与えたのではないだろうか。