「失敗の経験をさせてもらえなかった……」
「受験はもちろん、部活の大会やコンサートなど、チャレンジする前には入念なリハーサルをしました。もちろん、親に言われるがままです。そして、もし失敗しそうなときは、『諦める』という選択をとることもありました」
シンジさんの母親は、受験では「A判定」の学校しか受けさせませんでした。
幼少の頃から練習していたピアノも、中学2年生のときにコンサートに出る前に、
「まだ本番には早すぎるし、あなたには向いていない」
ということを決めつけて、辞めさせてしまいました。
これらは、母親がシンジさんのことを思って、「失敗したらかわいそう」と心配しすぎてしまうことが原因でした。
たしかに、自分の子が失敗して落ち込んでいるところは見たくないのでしょう。
しかし、そこから逃げさせてしまうことは、やるべきではありません。
大事なことは、「もし失敗しても立ち直れる」ということを教えることなのです。
大人の世界を見渡してください。
「あのとき失敗して、本当に大変だったんだよね~」
と語る人ほど、意外とタフな性格だったりします。
それは、子どもの頃からのチャレンジや失敗、それを乗り越える体験をしてこれたかどうかが影響しているのです。
● ピアノの発表会で失敗した
● 友達づくりに失敗した
● 受験に失敗した
シンジさんの母親は、「ヘリコプターペアレント」のように、それらの貴重な「失敗体験」を奪ってしまいました。
親の視点で、子どもが間違った方向に進もうとするのを、良かれと思って止めてしまうのです。その結果、彼は受験や仕事など、ストレスに立ち向かう方法を自力で対処する方法を学べませんでした。
そうして、「指示待ち人間」と呼ばれたり、すぐに諦めてしまう考え方のクセがついてしまうのです。
「私の言う通りにしてよかったでしょう?」
毒親はよく、こんなことを言います。
「私の言った通りにしてよかったでしょう?」
たしかに、人生経験も豊富な大人である親に任せておけば、子どもがやるよりもうまくいくかもしれません。
しかし、どんな人生の選択も親に任せるクセがついてしまうと、「大事なことは親に決めてもらえばいい」という、ハラ落ちする体験になってしまうのです。
その結果、自立心を失ってしまったまま社会に出ることになります。
シンジさんは、上司から、
「あなたの世代は、自分で仕事を探そうとしないですよね?」
と言われたことがショックで、「このままではいけない!」と思うに至ったと言います。
さて、「指示待ち人間」を自覚するシンジさんは、無事に自分を変えられるのでしょうか?