「再雇用以外」の繋がりも求めているアルムナイ

「アルムナイ採用」の台頭は日本だけの特徴ではありません。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの准教授やピープルアナリティクス領域でサービスを提供するVisier社(カナダ)が、様々な業種の大企業120社以上を対象に実施した調査によると、“Boomerang Hire”(いわゆる「アルムナイ採用」)を強化する企業は増加しており、「調査対象企業が2019年から2022年の4年間で採用した人の約30%が“Boomerang Hire”だった」としています(*1)。また、「マネージャー職で再入社した人の約40%は、退職時は非マネージャー職だったものの、成長してマネージャー職として再入社した」という事実もあるそうです。この調査結果からも、退職者を再雇用することは、国を問わず、多くの企業にとって重要な取り組みとなってきていることがわかります。

*1 Harvard Business Review「The Promise(and Risk)of Boomerang Employees」より

 Visier社の調査結果で興味深いのは業界別の比較です。全採用者における再雇用者の比率を見ると、小売業が33%と平均より高く、アルムナイ文化が普及し始めている製造業では25%、以前からアルムナイ文化が強いと知られるテクノロジー業界は14%、と平均より低くなっています。製造業やテクノロジー業界における再雇用者比率が全体平均より低いのは様々な業界特性が影響していると考えられますが、それにもかかわらず、これらの業界にアルムナイ文化が普及し、継続している理由は、企業とアルムナイには再雇用“だけではない”関係性があるからだと考えられます。

 筆者が研究員を務めるアルムナイ研究所が2020年に実施した「過去に在籍した会社との関わり方」についての調査では、ビジネスでの協業や副業など、「正社員ではない形で一緒に仕事をしたい人」の比率が、「再入社したい人」の比率を上回っていました(*2)。この調査からの3年間で日本でもアルムナイ文化が普及したため、現在はこの比率は異なるかもしれませんが、「再雇用以外」の繋がりも求めているアルムナイが多いという事実は変わらないでしょう。

*2 アルムナイ研究所 「転職経験者を対象に『過去在籍した企業との交流と協業の可能性』に関する調査を行いました」参照