「居る理由と目的がある場所」にすることが大切

「再雇用以外」の繋がりも求めているアルムナイが多いという事実を前提とすると、どのような点に注意してアルムナイとの関係を構築すれば、「アルムナイ採用」を含む新しい関係が継続的に発生するのでしょうか。

 一つ目は、アルムナイネットワークを全ての人にとって、「居る理由と目的がある場所」にすることです。逆説的ですが、「アルムナイ採用」をしたいのであれば、再入社したい人と人事部(企業側の事務局)だけが繋がるアルムナイネットワークにしないことが重要です。

 アルムナイは「再雇用のためのタレントプール」ではありませんし、会社の再雇用情報だけを受け取りたい人ばかりではありません。“いますぐに再入社したい人”もいれば、“全く再入社するつもりはないが、会社や他のアルムナイの近況を知りたい人”もいます。また、“いまは再入社できないものの、いつかは戻りたい気持ちもあり、会社の近況を知りたい人”もいれば、“会社に対しては少しネガティブな感情があるけれども、他のアルムナイとはビジネス協業をしたい人”もいます。ある企業のアルムナイネットワークに参加した人が、「前職でもアルムナイの取り組みが始まったので、会社や他のアルムナイとビジネスの話ができるかもしれないと思って喜んで登録してみたら、他のアルムナイと繋がることはできず、登録初日から一方的に再雇用の誘いが来るだけでした。私のように“再入社希望でない人”は求められていないと感じて退会しました」と寂しそうにおっしゃっていました。対象を再入社希望者に限定せず、このような方を含む様々なアルムナイが存在するネットワークにすることが、他のアルムナイにとって「そこに居る理由」になるのです。

 二つ目は、企業とアルムナイの関係構築プロセスが“長期的なジャーニー”として考えられていることです。様々なアルムナイと繋がるネットワークにしただけで再雇用や協業が生まれるわけではありません。それぞれの会社に対する感情、退職してからの期間、現在のプライベートや仕事の状況などによって、お互いのニーズが合う形やタイミングは異なります。退職した会社と縁が一度切れてから繋がるというアルムナイの視点で考え、繋がった後にお互いの近況や変化を知り、信頼を再び深めて、それからようやく再雇用や協業など共創をする関係になります。

 一つ目と二つ目のどちらのポイントも遠回りに感じられるかもしれませんが、この「急がば回れ」こそが「アルムナイ採用」を含むアルムナイの取り組みを成功させるポイントなのです。