企業とアルムナイの、良いタイミングでの良い関係

 最後となる三つ目は、オフボーディングを強化して“ポジティブな退職エクスペリエンス”を実現することです。アルムナイとの良好な関係構築は退職後に始まるのではなく、退職前から既に始まっています。「人が体験したことに対する印象は、最高の瞬間と終わり方に大きく影響を受ける」といったピーク・エンドの法則というものがあり、雇用関係のエンドにあたる退職時の体験は会社に対する印象や感情に大きな影響を与えます。それにもかかわらず、新規入社者の円滑なキャッチアップを支援するオンボーディングと比べて、退職者を円滑に送り出すオフボーディングは十分に設計されているとは言えません。

 筆者が経営する会社はアルムナイに特化したクラウドシステム『Official-Alumni.com(オフィシャル・アルムナイ・ドットコム)(*3)』の提供を行い、企業と退職したアルムナイとの関係構築を支援しています。そのため、当社は、退職する人の辞め方と辞められる企業の送り出し方の両方の「辞め方改革」により、良いオフボーディング体験を実現することが重要だと考えています。

*3 Official-Alumni.comは、ハッカズークが提供するアルムナイ専用クラウドシステム。企業が効率よく運用できる管理機能に加えて、登録するアルムナイのメリットとなるアルムナイ同士のチャットや名簿検索、さまざまな募集ができる機能などが簡単に利用できるツールになっている。

 アルムナイは社内外を知る貴重な人材だからこそ、会社側が焦ってしまうことで「長期的な可能性」を台無しにしてしまうのはもったいないです。企業とアルムナイの双方にとって、良いタイミングで良い関係を構築するためにも、それぞれのアルムナイの状況も踏まえ、時には「急がば回れ」の姿勢で関係を構築してみるのが良いのではないでしょうか。