「本をよく読む」「家に本がたくさんある」子どもは学力が高い
また、蔵書数が多い家庭の子どもほど学力が高いというのは、さまざまな調査研究によって示されている。
たとえば、2017年度に文部科学省によって実施された全国学力・学習状況調査の結果と、その対象となった小学6年生および中学3年生の子どもたちの保護者に対する調査の結果を関連づけた調査報告書では、蔵書数の多い家庭の子どもほど学力が高いことが示されている。
小学6年生のデータをみても、蔵書数が0~10冊の家庭の子どもよりも11~25冊の家庭の子どもの方が学力が高く、それよりも26~100冊の家庭の子どもの方が学力が高くなっている。101~200冊の家庭の子どもの学力はさらに高くなっており、201~500冊の家庭の子どもはそれ以上に学力が高く、501冊以上の家庭の子どもの学力が最も高くなっていた。
ただし、裕福な家庭ほど蔵書数が多いだろうし、蔵書数は親の社会経済的背景と関係しているのではないかというのは、だれもが思うことであろう。実際、データを確認すると、そうした関係は明らかにみられる。社会経済的地位の高い親の家庭ほど、つまり学歴や収入が高い親の家庭ほど、蔵書数が多くなっていた。そうなると、家庭の蔵書数の多いことが子どもの学力を高めているわけではなく、親の学歴や収入の高さが蔵書数の多さや子どもの学力の高さをもたらしているだけなのではないかと思うかもしれない。
しかし、さらにデータを詳細に検討してみると、どうもそういうわけではないことがわかる。社会経済的背景を統制しても、家庭の蔵書数と子どもの学力は関係していたのだ。つまり、学歴や収入の低い層でも、高い層でも、それぞれの層の中では、蔵書数が多い家庭の子どもほど学力が高いという傾向がみられたのである。
こうしてみると、家庭の蔵書数が多いほど子どもの学力が高まるというのは確かであり、読書が学力向上につながるといってよいだろう。たとえ家に本があまりなくても、こうした知見を踏まえて積極的に読書をするように心がけることで、学力が向上していくことが期待できる。