課長クラス以上のマネジャーにとって「会議術」は、チームの生産性を上げるために必須のスキルです。ところが、私たちには「会議術」を体系的に学ぶ機会がほとんどありませんから、悩んでいるマネジャーも多いのではないでしょうか?そこで、ソフトバンク在籍時に「最高品質の会議術」を磨き上げ、マネジャーとして大きな実績を残した前田鎌利さんにその会議術を『最高品質の会議術』(ダイヤモンド社)としてまとめていただきました。本連載では、その内容を抜粋して掲載してまいります。第1回は、孫正義氏のつくった経営指針「孫の二乗の兵法」に学んだ意思決定法などを紹介します。
「会議術」はマネジャー必須のスキル
課長クラス以上のマネジャーにとって「会議術」は、チームの生産性を上げるために必須のスキルです。
会議とは、「関係者が集まって相談をし、物事を決定すること」(『大辞泉』小学館)。つまり、「物事を決定すること」=「意思決定」こそが会議の本質ということです。そして、現場のメンバーがプロジェクトを前に進めるためには、組織的な意思決定が不可欠。現場に「生産性を上げよう」と激励する前に、マネジメント・サイドがスピード感をもって精度の高い意思決定をしなければならないのです。
であれば、マネジャーが「会議の品質」を高めることによって、「意思決定の品質」を高めるスキルを磨かなければならないのは、当然の理というべきでしょう。
ところが、私たちには「会議術」を体系的に学ぶ機会がほとんどありません。だから、「以前からこうだった」「上層部がこういう会議をやっているから」などといったあやふやな理由で、長時間に及ぶ非生産的な会議(何も決まらない会議)を漫然と続けている会社もあります。これでは、生産性が上がるはずがありません。
そのため、近年、現場のビジネスパーソンから「会議=悪」論とでもいうべき論調を数多く聞かされるようになりました。「誰も聞いていない長い説明」「論点を明確にしないまま、迷走する議論」「一部の参加者が議論を牛耳る、一方通行の会議」「情報共有と称する非生産的な会議」「調整という名の無責任体質」……。私自身、そのような会議に参加してモチベーションを下げた記憶があります。だから、マネジャーになってからは、「そのような会議だけはするまい」と思っていましたが、これがなかなか難しい。私自身、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)ではじめてマネジャーに昇格したときには、「どうしたらいいのか?」と頭を抱えそうになったものです。
何しろトップは孫正義社長(現代表取締役会長兼社長)ですから、矢継ぎ早にやるべき仕事が降りてくるうえに、現場では解決すべき課題が次から次へと持ち上がります。それら一つひとつに対して、スピード感をもって意思決定をしていかなければならないのですが、会議をうまく運用する技術がないために、プロジェクトをスムースに動かすことができませんでした。
そのため、メンバーから不信感をもたれたこともありますし、上層部から「お前は決断力がないのか」と強く叱責されたことも一度や二度ではありません。このままではダメだ……。こうして、否応なく、私は「会議の品質」を高めるために、試行錯誤を繰り返すようになったのです。