週刊誌に連載コラムを持つ
医師の國頭英夫
江戸時代から商業都市として栄えた鳥取県米子(よなご)。この地に1899年、鳥取県第二中学校が創立された。米子東高校の前身であり、鳥取西高校、倉吉東高校と共に、鳥取県の公立御三家に数えられてきた。略称は「米東(べいとう)」だ。
卒業生には、週刊誌に絶妙なコラムを連載している医師がいる。臨床腫瘍学が専門の國頭(くにとう)英夫だ。週刊新潮に「里見清一」のペンネームで毎週、『医の中の蛙』を連載している。
國頭は米子東高校から1986年に東京大医学部を卒業した。国立がんセンター中央病院内科などを経て現在は日本赤十字社医療センター化学療法科部長だ。筆名の「里見清一」は、山崎豊子の『白い巨塔』の登場人物から取った。
森鴎外に代表されるように「医師で小説家」という人物は、少なくない。ただ、社会時評を交えたコラムを毎週、書き続けるだけの文才、見識を有する医師は、そうはいない。國頭は高校時代からエッセーなどを書き、それをガリ版刷りにして友人たちに配っていた、という。
國頭は、『偽善の医療』(新潮選書)など一般向けの著作も多い。「薬価高騰で国民皆保険制度が破綻する」と警告している。
文芸の世界で活躍している卒業生では、直木賞を取った小説家の桜庭一樹(かずき)もいる。女性作家で、極真空手の有段者だ。「桜庭一樹」はペンネームで、男の名前の方が小説を書きやすい、という意図があるという。
桜庭は、『赤朽葉家の伝説』で2007年上期の直木賞候補になり、07年下期には『私の男』で、直木賞を取った。08年にはこの両方の小説で本屋大賞のベスト10位に入った。ゲームのノベライズやライトノベルなどの作品を、多く手がけている。
大正末期に『富士に立つ影』のベストセラーを著した大衆小説の白井喬二が、旧制時代の卒業生だ。
小説家の松本薫は、著作の『梨の花は春の雪』が映画化されている。俳人、脚本家の今井聖、放送作家の河合秀仁、小説家の靖子靖史、サイエンスライターの難波美帆、アニメーターの錦織敦史もいる。
脚本家の三上幸四郎は23年、『蒼天の鳥』で江戸川乱歩賞を受賞した。