その後『わたしの一番かわいいところ』という曲がTikTokで鬼バズりして若者文化の中で同グループの浸透が深まったようである。40代筆者にとってTikTokに対する認識はおおむね「見ると目が悪くなりそうなアイコン」というところでほぼ完結していて、目が悪くなりそうだから遠ざけたい気持ちと、主に若者が利用するTikTokへの中年的な気後れがあいまって、TikTokで起きていることはいよいよ異次元の出来事かのように感じられる。

アイドル敬遠おじさんの壁を
突き破って刺さるプロのパフォーマンス

 そんな若者カルチャーの代表ど真ん中にいるようなグループになぜハマったのか、一つのケースとして概説するので参考にされたい。

 娘と見ていたNHK Eテレの『ニャンちゅう! 宇宙! 放送チュー!』に、メンバーの一人の鎮西寿々歌さんが当時「タラスズ」という役名でレギュラー出演していて、大変感じのいいかわいらしいお嬢さんだったので、そうした女性を見ることは娘の情操教育にも芳しく思われ、妻と一緒に彼女を応援していた。応援といってもテレビに向かって「がんばって」と念を飛ばすくらいである。

 しばらくして、男女問わずアイドルのパフォーマンスを見るのが好きな妻が、「タラスズがアイドルをやっていてダンスがめちゃうまい」と興奮して話しているのを聞き、“アイドル”という単語を聞いた瞬間にやや敬遠したく感じられる筆者は「ふーん」とだけ返事をしていた。上手い人のダンスは延々繰り返して見るほど好きだが、“アイドル”となるとちょっと近寄りがたいのである。

 妻に気のない返事をしたさらに数カ月後、保育園でダンスを褒められいっぱしのダンサー気分になっている娘がYouTubeでダンス動画を漁っている折、妻がタラスズこと鎮西寿々歌さんがFRUITS ZIPPERでダンスをしている動画を見せてくれ、フリフリの衣装で想像以上にゴリゴリのアイドルだったので正直少し怯んだのだが、凄まじいキレと溌剌とした健康的なかわいさ溢れるパフォーマンスはその抵抗をぶち破って筆者を驚愕させた。

曲もキャッチーだし、もう妻も娘も関係なく夜中に一人でFRUITS ZIPPERのダンス動画からステージ動画を延々繰り返し見るおじさんとなり果てて2、3日もすると、アイドルへの抵抗はすっかりなくなり、「よく見れば他のメンバーもみんな一生懸命で上手だし、何やらかわいいぞ――」となって今に至る。