VC業界で特徴的だったのはTwitterやUberへの投資で知られる投資家・Chris Sacca(クリス・サッカ)が2021年8月に気候対策ファンドのLowercarbon Capitalを約8億ドル(約880億円)でファンドレイズしたことです。気候変動が米国のスタートアップシーンのど真ん中であることを印象付けました。

また、長年個人的に注目している核融合領域のスタートアップでは大きなニュースが2つありました。

1つめは2014年YC(Y Combinator)卒業生であるHelion Energyが2021年11月にシリーズEで、なんと元YCのSam Altman(サム・アルトマン)個人からリードで約500億円の資金調達を発表したこと。2つめは、MIT(マサチューセッツ工科大)発のCFS社が12月にシリーズBで、あのTiger Globalをリードで約2000億円もの資金調達を発表したことです。彼らが圧倒的な未来を切り開こうとしている中、日本で活動する僕らも「今ここで勝負しなければ」という使命感が芽生えています。

さらに、量子業界ではRigetti ComputingとIonQがSPAC上場を果たし、引き続き量子業界への市場の関心の高さが読みとれます。今後ハードウェアが進歩していく中、量子化学シミュレーションなど、より具体的なアプリケーション開発が求められるのでないでしょうか。

2022年の投資環境の変化や注目領域・プロダクトについて

引き続き、トレンドを予測するのではなく、新産業の創出に貢献するというスタンスで淡々とやっていきたいです。

日本では第6次エネルギー基本計画が閣議決定され、再生可能エネルギーの比率を従来目標の22〜24%から36〜38%に引き上げました。それに伴い、蓄電池等への本格的な投資が今後必要になると考えます。このような、キャピタルインテンシブ(資本を多く必要とする)で長い時間がかかる領域こそ、積極的に投資に取り組んでいきたいと思います。

また、COP26の合意文書で示された通り、脱炭素だけではなく森林や生物多様性の保全、海洋のマイクロプラスチックなど、地球環境全般にもスタートアップのビジネスチャンスが広がってくると感じています。

世界経済全体を見渡してみると、中国が「中国製造2025」と呼ぶ産業施策を掲げて半導体等のテクノロジー領域で急成長しています。おそらく2030年までにはGDPで米国を抜き、世界最大の経済大国になると考えられています。そうなると今後、日本が10年かけて育成すべき産業は何なのか? 最先端のテクノロジーを保有するベンチャーの存在がますます重要になるのではないでしょうか。