この状況に両社を照らし合わせてみると、MicrosoftはXboxを失ってもWindowsというプラットフォームがある。だがSIEがPS5を失ったとしたら、Windowsまたはスマートフォンというプラットフォームを選ばざるを得ない。立場は違えど、奇しくも両社が選んだ戦略が「ソフトウェアメーカーとしての地位を確保」することだと考えれば、今回の買収劇がふに落ちる。

2022年2月5日に発表された2021年度第3四半期の連結業績において、ソニーグループ副社長兼CFOの十時裕樹氏が語ったコメントが印象的だ。「時期は明確にできないが、PlayStationのIPをモバイルに展開する計画がある。確実に増やしていくことになる」──これは自社ソフトをモバイルアプリケーションに移植するというよりは、将来的にクラウドゲーミングとして提供すると考えるのが妥当だろう。

ソニーグループ副社長らが口を揃えるキーワード「ライブサービスゲーム」

SIEの発表で印象的だった副社長のコメントはほかにもある。「Bungieが持つライブサービスゲームの知見や技術をグループ内に取り込み、PlayStation Studiosが制作するゲームIPにも活用していく狙いがある。2025年度までに10タイトル以上のライブサービスゲームをローンチすることを計画している」というコメントもそうだ。発言の一節にある「ライブサービスゲーム」というキーワードは最近ではスクウェア・エニックスが発売するPS4/5、Steam向け新タイトル『BABYLON’S FALL』(開発はプラチナゲームズ)の説明でも語られている。

これに加えて、1月31日にSIEの社長兼CEOであるジム・ライアン氏もPlayStation Blogで「PlayStation Studiosでは複数のライブサービス型ゲームが開発中」という投稿をしている。

「ライブサービス型ゲーム」をシンプルに説明するならば「継続的にアップデートすることで、ゲームの寿命を伸ばす」タイトルのことだ。GaaS(Games as a Service)とも呼ばれている。こちらも、筆者の過去記事を参照していただくと状況がわかりやすい。

SIEは当面PS5のビジネスを継続しながらも、ライブサービス型ゲームにより利益率を向上するというのが当面の目標なのだろう。そして来たるべき、ゲーム専用機の存在価値が薄れていくXデーに備えて、ソフトウェアメーカーとしての地位を確保しておきたいというのが本音ではないのか。そのために現段階から優秀なソフトウェアメーカーを傘下に入れておく。さらに言えば、任天堂やバンダイナムコホールディングスも、決算の場などで言及を始めている「メタバースの時代」への布石になるのではないか。これが私から見た今回の買収劇の解釈である。