しかし実際に入社してみると、想像とは異なる状況が広がっていました。サービスの大枠はすでにできていると聞かされていたにも関わらず、構想から何から、まったく存在していなかったのです。そこで、後払いとはどういうスキームなのか、誰にどんな価値を提供するものかを考え、後払い決済の全てのサービスをゼロから作ることになりました。

当時は参考になるような、先行のBNPLビジネスはグローバルにもありませんでした。そのため、まずはクレジットカードのスキームについて学び、その上でカタログ通販のビジネスモデルに注目しました。カタログ通販では、ユーザーがカタログを見て商品を注文すると、商品と一緒に請求書が届きます。商品を受け取った後に支払いをするこの仕組みは、まさに「後払い」だったのです。

 

参画から4カ月後の2002年3月には、早くもテストサービスの形でBtoC通販向け決済「NP後払い」の提供を開始しました。後払いのサービス自体は提供できましたが、この時点でもまだ、このビジネスがうまくいくとは思っていませんでした。

当時の私には金融の知識もなければ、会社経営の経験もありませんでした。その中で後払いという新しい仕組みを作り社会に提供する。何もかも手探りでやるしかなく、自信はまったくなかったのです。大手商社からの転職。失敗すればそれまでのキャリアが失墜する恐怖感もありましたが、とにかく前向きに進めることだけを考えました。

実際に提供を開始してみると、利用してもらうショップの開拓には当初苦労しましたが、一旦事業者に導入してもらえれば、購入者であるユーザーはすぐに使ってくれました。導入したEC店舗によっては、決済手段の2、3割をNP後払いが占めるケースも出てきたのです。この結果を見て、少なくともユーザー側にはニーズがあるという手応えを得ることができました。

2001年頃は日本のECの勃興期であり、EC市場は年々大きく拡大していました。当初のECサイトにおける決済手段の多くは、振り込みやクレジットカードによる前払いでした。ECサイトが増え、前払いでの決済が増加すれば、「代金は支払ったけれど商品が届かない」「届いたものが画像と違う」といったトラブルが発生し、社会問題にすらなっていました。また購入者に代金を振り込ませて商品を送らない、詐欺も発生します。後払いは、トラブルを回避したい購入者のニーズに応えることができていたのです。