ユーザーにニーズのあるBNPLは、今後間違いなく伸びると確信しました。しかし利用が拡大しても、ビジネスとして成立させるためのハードルはかなり高いものでした。ユーザーの利用が増えれば支払いが滞ったり、商品だけを受け取る詐欺なども増えたりします。ユーザーの未払い率をきちんとコントロールした上で、サービス提供者として利益を上げなければなりません。その実現方法が分からず、当時は眠れない日々が続きました。

未払いリスクを最小化し利益を上げる、運用ハードルの高さ

ビジネスモデルとして参考にしたカタログ通販とBNPLのサービスには大きく異なる点があります。カタログ通販においては、カタログ通販事業者が商品販売も決済手段の提供も行っています。そのためカタログ通販事業者は、未払いのリスクを自社の中である程度容易にコントロールすることができます。たとえば、詐欺被害の発生する恐れがある商材があれば、それを自社内の判断のみでカタログから外すことができるのです。

対して決済手段だけを提供するBNPLのビジネスモデルでは、取り扱う商品の選定はあくまで販売するEC店舗が行います。つまりBNPL事業者のみで、未払いリスクのコントロールを完結させることができないのです。

 

そうした構造の中、購買力のあるEC店舗はBNPL事業者に対して、手数料の値下げなど、さまざまな要求をしてきます。さらには未払いリスクの考慮に加えて、ユーザーの利便性の向上にも務めなければなりません。これら多くの要求のバランスを取りながら、ビジネスのボリュームを拡大しリスクも減らす。その正解が見つからない中、手探りの事業推進が続きました。

リスクが増えることを承知で、ネットプロテクションズではビジネス拡大のために、当面はNP後払いを採用してくれるECサイトの獲得に注力しました。採用してくれるECショップが増えれば、運用は大変になります。そのため運用負荷を軽減しリスクを最小化するための仕組み作りを、並行して行いました。これを苦労しながら続け、黒字化したのが2008年でした。

サービス開始当初から資金調達をしてマーケティングプロモーションなどに投資していれば、もっと早くに規模を拡大し、黒字化できたかもしれません。しかしながら資本構造上それはできなかったので、地道な改善と成長を続けました。結果的にリスクを最小化するための運用ノウハウが蓄積され、ユーザーや事業者の拡大にも耐えられる土台を作ることができました。