2021年12月に配信開始し、心臓専門医のピーター・マカロー氏をゲストに迎えたエピソードにも、ワクチンに関する誤情報が含まれていた。こうした背景を懸念し、自身の全楽曲の削除を求めるかたちでSpotifyに抗議したのが、ロックミュージシャンのニール・ヤング氏だ。

ヤング氏は2022年1月24日、「音楽を愛する人々に対して命を脅かす誤情報を流すSpotifyをサポートし続けることができない」と主張。その上で、「ローガンか、ヤングのどちらかを選べ」と要求した(編集部注:ヤング氏は当初、自身のウェブサイトにオープンレターを公開していたが、今は削除されている)。結果としてSpotifyはローガン氏を選び、1月26日までにヤング氏の全楽曲がSpotify上から削除された。

以降は、シンガーソングライターのジョニ・ミッチェル氏や作家のロクサーヌ・ゲイ氏らも、ヤング氏に共鳴し、Spotify上からコンテンツを引き上げた。また、セバスチャン・バック氏、デヴィッド・クロスビー氏、ペリー・ファレル氏ら大物ミュージシャンたちも、ヤング氏への支持をSNS上で表明した。

一方でローガン氏は、誤情報の拡散に関する自身の責任を認めていない。1月31日にはSNS上で自身の意見を述べたが、「(JREに対して)歪んだ認識を持つ人が多い」「(マカロー氏とマローン氏)は非常に信用でき、知的で経験豊富だが、主流派とは違った意見を持っている」「私は医者でも科学者でもないため、彼らが正しいかどうかは分からない」などと釈明するにとどまった。


ユーザーは好調に増加するも、市場シェアは徐々に低下

Spotifyは2月2日、2021年第4四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比24%増の21億6800万ユーロ(約3480億円)、純損失は3900万ユーロ(約51億円)。月間アクティブユーザー数(MAU)は前年比18%増の4億600万人、有料会員数は16%増の1億8000万人と好調だ。

順風満帆に見えるSpotifyだが、実は音楽ストリーミング市場におけるシェアを少しずつ失ってきている。米調査会社MIDiAが2021年1月に公表した調査結果によると、市場におけるSpotifyのシェアは、2021年第2四半期の時点では31%だった。2019年は34%、2020年は33%だったため、微減が続いている。こうした中、さらなる飛躍を目指すSpotifyが注力しているのがポッドキャストだ。

MIDiAが公表する「Music subscriber market shares Q2 2021」より
MIDiAが公表する「Music subscriber market shares Q2 2021」より

Spotifyでは近年、独占コンテンツの獲得に力を入れてきた。JREは独占コンテンツの1つで、2020年5月に1億ドルで独占配信の契約を締結している。日本でも2022年1月27日、国内音声コンテンツクリエイターの支援拡充を目的に総額1億円を拠出し、「クリエイター・サポート・プログラム」を強化すると発表した。