デジタルツインとメタバースは何が違うのか

デジタルツインとよく比較されるのがメタバースだが、どのような違いがあるのか。

デジタルツインは前述のとおり現実空間の双子、つまりコピーをデジタル上に再現することで、シミュレーションなどに用いることを想定している。一方でメタバースは必ずしも現実空間を再現することを想定していない(実際には現実空間を再現したものも存在するが)。また、メタバースはユーザーがアバターとして参加し、ゲームやコミュニケーション、経済活動などを行うプラットフォームとして利用するケースが一般的だ。

一概には言えないが、大きく分ければデジタルツインは「シミュレーションのために現実を再現したデジタル空間」、メタバースは「コミュニケーションのためのデジタル空間」と考えられるだろう。

製造業やプラントの業務効率化やコスト削減に活用

製造業において、製品設計や製品データ管理を行うPLMを支える概念として、世の中に広がったデジタルツイン。その後も製品や製造ラインのシミュレーション、プラントシミュレーションなどに活用されている。

デジタルツインの活用効果としては、業務効率化やコスト削減が挙げられる。たとえば製造ラインの一部を変更する場合などに、デジタルツイン上で事前にテストを行えば、最も効率の良いライン設計や、開発期間・コストの削減につなげることができる。

また、デジタルツインによって、リードタイム縮小などの付加価値向上も図ることが可能だ。製造業や建設業の企画設計プロセスにおいては従来、実体のあるプロトタイプを製作してテストを行っていた。しかし、デジタルツインを活用すれば、材料費や人件費などのコストを減らすことが可能だ。再設計・再試験もバーチャルに実施できるため、製品開発のリードタイム縮小効果が期待できる。

さらに、製品の故障予知などにもデジタルツインは活用できる。たとえば同じ工程で製造・出荷された2つの製品の出荷後の稼働状況をIoTで把握し、データを蓄積していけば、故障する可能性を事前に察知し、アラートを通知することも可能だ。

米GEでは、航空エンジン「GE90」のブレードをデジタルツインで再現。時間経過によるエンジンブレードの損傷予測に利用されている。巨大な飛行機のエンジンはメンテナンスコストが高い。デジタルツインの活用により、ボーイング社などGEの顧客はメンテナンス頻度を最適化してコストを削減することができる。GEは発電所や鉄道などの製品にもデジタルツインを組み込んで提供し、顧客のコスト削減を図っている。