IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などのテクノロジーを使って、現実空間の情報を取得し、仮想空間上にその環境を再現する「デジタルツイン」が注目されている。デジタル空間で現実空間の状況分析やシミュレーションを行い、予測やサービス向上などに役立てるのが主な用途だ。製造業をはじめ、現在さまざまな分野で活用が進むデジタルツインについて解説する。
現実空間をデジタル空間上に再現した「デジタルの双子」
デジタルツイン(Digital Twin)とは直訳すると「デジタルの双子」という意味。現実空間にあるモノやプロセスを文字通り“双子”のようにデジタル空間上に再現して、モニタリングやシミュレーションを可能にする技術である。
デジタルツインの概念は2002年、現フロリダ工科大学教授のマイケル・グリーブス氏が、製造業におけるPLM(製品ライフサイクル管理)の基盤モデルとして提唱したことで、学術界・産業界に広まった。その後、2010年に発行されたNASAのロードマップレポートで、主任技術者のジョン・ビッカース氏がこの概念を「デジタルツイン」と名付けている。
デジタルツインは、現実空間とデジタル空間、そして両者をつなぐ情報連携の3つの要素で構成される。デジタルツインの実現には、現実空間の状態(データ)を継続的に感知するためのセンサーや、データ通信のためのネットワーク、収集したデータをまとめて管理し、分析や予測を行うための情報基盤などのテクノロジーが必要となる。
具体的には現実空間をモニタリングするためのIoTや、データ蓄積のためのクラウド、データ解析のための機械学習(ML)、人工知能(AI)、LPWAや5Gといった通信などの技術がデジタルツインに活用されている。取得したリアルタイムデータや予測データをデジタル空間上へ反映することにより、現実空間を再現・予測するデジタルツインとして、動的なモデルを表示したり、シミュレーションしたりする仕組みを実現している。